前回の記事では「いつかそのうちに」と放置した資産が、実は静かに目減りしている、とうことをお伝えしました。
今回は、その放置による“損失”を数字で具体的に見ていきます。
金利って、説明できますか?
預金金利や住宅ローン金利など、私たちの身近な生活の中に「金利」は確かに存在します。
でも、いざ誰かに説明しようとすると──
「えーっと……(汗)」
となること、ありませんか?
その代表例が「単利と複利の違い」。
「聞いたことはあるし、なんとなく知ってる気がする」
けれど、いざ説明となると意外と曖昧。
今回は、その違いを“ニワトリとたまご”に喩えて、だれでもスッと理解できるように整理してみます。
単利とは?──たまごを食べてしまうしくみ
単利とは、運用している元本に対してのみ利息がつく仕組みのことです。
元本100万円を運用する例で考えてみましょう。
極端ですが…今回わかりやすくするために、年利20%とします。
「単利」で運用した場合
運用開始時点(1年目)の元本は100万円です。
これを運用すると、1年後の利息は20万円(100万円×20%)で、元利金合計は120万円ですね。
2年目の元本は、当初と同じく100万円です。
2年目も同じように運用すると、2年後の利息は20万円(100万円×20%)です。
では、3年目の元本は?
やっぱり100万円ですね。
3年後の利息も20万円。
以降も同じように計算していくと、
5年後の元利金合計は、200万円(元本100万円+利息20万円×5年分)となっています。
※単純化のためここでは税金とかは考えません。
「単利」をニワトリとたまごの関係で喩えてみると・・・
- ニワトリを元本
- 卵を金利(利息)
と考えればイメージしやすいでしょうか。
ニワトリを1羽飼っていて、そのニワトリが毎年1個の卵を産むとします。
産んだ卵をすぐに食べてしまったら、毎年得られる卵は1個だけですよね。
その結果、何年経っても、ニワトリは1羽で、たまごも1個ずつしか手に入らない。
これが単利の世界です。
複利とは?──たまごを育てて“増やす”しくみ
複利とは、元本に加え、そこから生じた利息にもさらに利息がついていく仕組みのことです。
複利で運用した場合
先ほどと同じく、100万円を5年間運用します。
ただ、今回は「複利」で運用します。
運用開始時点(1年目)の元本は100万円です。
これを運用すると、1年後の利息は20万円(100万円×20%)で、元利金合計は120万円です。
ここまでは1年目と変わりません。
違うのは2年目以降です。
複利で運用する場合、2年目の元本は、
もとの元本100万円に付いた利息20万円を加えた120万円です。
※単利のときの2年目の元本は、最初の元本と同じ100万円だったことを思い出してください。
これを運用すると、2年後の利息は24万円になります。
(120万円×20%)
では、3年目の元本は?
144万円ですね。
(2年目の元本120万円+利息24万円)
なので、3年後の利息は、約29万円(144万円×20%)。
以降も同じように計算していくと、
5年後の元利金合計は、249万円となります。
2年目からは、前年の利息が加わった金額が元本になり、その元本に対して利息がつく。
つまり「利息が利息を生む」状態です。
「複利」をニワトリとたまごの関係で捉えると・・・
- ニワトリ(元本)がたまご(利息)を産む
- そのたまごをかえして、新たなニワトリにする
- ニワトリが増えれば、産まれるたまごも増える
その結果、指数関数的に資産が増えていくのが複利です。
(余談)よくばりすぎたねこ──絵本から学ぶ複利のヒント

ところで、「たまごを育てて増やす」という話をしていて思い出した絵本があります。
実は私、小学校などで「絵本の読み聞かせ」の活動を8年間くらいやってました。
よく読んでいたのが『よくばりすぎたねこ』という絵本。
ストーリーはこんな感じです。
ひよこを捕まえたねこ。
早速食べようとしたのですが、
”ひよこを大きく育ててから、
丸焼きにして食べたっていいじゃないか”
と考え、今すぐ食べたい気持ちを
ぐっとこらえて育てることにしました。
ひよこが大きくなると、
”卵を産むまでまったっていいじゃないか。
そうしたら・・・”
と考え、また食べたい気持ちをこらえて卵が産まれてくるのを待ちました。
ねこはさらに、
”もっと待てば卵をたくさん産む、その卵からひよこがかえる・・・そうしたら・・・そうしたら・・・”
と妄想をどんどん膨らませていきます。
この絵本は、「金利」「複利」についての内容ではありませんが、なんか通じるところがあるな・・・と思ってご紹介させていただきました。
さて、ねこは最終的に”ごちそう”にありつけたのでしょうか。
最後は衝撃的な(?)結末が待っています。(笑)
この絵本を読むときの子ども達の反応は、実に面白い。
「きみがねこだったら、どの時点で食べちゃう?」と尋ねみると、子供によって反応は様々。気になる方は、ぜひ絵本を手にとってみてくださいね。
単利と複利、どれくらい差がついた?
さて、本題に戻ります。
最後に、改めて数字で確認してみましょう。

なんと、5年で約50万円の差。
しかも、これが10年、20年と長期になると、複利の方は増えるスピードが速くなり、単利の方との差が広がっていきます。
「利息が利息を生む」複利の力、恐るべしですね。
こう考えると、
- 「いつか、そのうちに…」と何の工夫もなく、資産をそのまま放置して場合
- “時間を味方“につけて、複利のチカラで資産を増やしていく場合
では、大きな差が生まれる、ということをご理解いただけるんじゃないでしょうか。
さて、次回は、
・毎月積み立てしながら複利で運用するとどうなるのか?
・Excelや電卓での複利シミュレーション
について、誰でもすぐに試せる方法をご紹介します。