中古住宅の売却では“建物状況調査”をどうするかがポイントになります。
中古住宅を売るとき、売主が本当に考えていることはシンプルです。

できるだけ高く売りたい

できるだけ早く売りたい
──これが本音でしょう。
売却活動中に、売却した後のことまで考える人はほとんどいません。
「売ってしまえば終わり」──多くの人がそう思っています。
建物状況調査が必要な理由(Why)
しかし実際には、売却後に思わぬ落とし穴が待ち構えていることがあります。
- 引き渡しから数か月後、買主から「雨漏りがする」と言われる
- 住み始めて1年後、「床下にシロアリがいたじゃないか」と指摘される
- 「家が傾いている」と訴えられ、揉めに揉める
売主からすれば、

そんなこと言われても・・・
もう知らんがな。
と思うでしょう。
でも、買主からすれば「知らなかったでは済まされない」。
こうした食い違いからトラブルに発展することは、決して珍しくないのです。
こうした“売主の油断”と“買主の疑念”を少しでも減らすために導入されたのが、「建物状況調査」という仕組みです。
建物状況調査とは?
建物状況調査とは、国土交通省が制度化した中古住宅の検査システムです。
専門の建築士(既存住宅状況調査技術者)が、目視を中心に住宅の劣化や不具合を確認し、結果を報告書として残します。
不動産会社(宅建業者)には、この調査に関して次のような義務があります。
- 媒介契約を結ぶとき
- 「建物状況調査をあっせんするかどうか」を媒介契約書に明示すること。
- あっせんしない場合には、その理由を記載すること。
- 重要事項説明のとき
- 実際に建物状況調査が行われていれば、その結果の概要を買主に説明すること。
つまり、「建物状況調査は聞いたこともない」というまま取引が進むのは、法律上ありえない仕組みになっています。
建物状況調査の仕組みとメリット(How)
売主と買主の関係は、どうしても不信感が残ります。
「売る側は少しでも良く見せたい」
「買う側は隠していることがあるんじゃないかと疑う」
そこで第三者である専門家が国の基準に沿って調査し、記録を残すことで、不安の一部が解消されます。
- 調査がある → 「基礎に大きなひび割れはなし」「雨漏り跡なし」と記録が残り、安心材料になる
- 調査がない → 「言った」「聞いてない」で揉めやすくなる
売主にとっては「後から文句を言われるリスクを減らせる」、
買主にとっては「契約の判断がしやすい」というメリットがあります。
調査で実際に確認すること(What)
建物状況調査で確認されるのは、主に以下の3つです。
- 構造耐力上主要な部分
基礎・柱・梁などに劣化やひび割れがないか - 雨水の浸入に関わる部分
屋根や外壁、開口部などに雨漏り跡がないか - 給排水管の漏水
床下や天井裏など、目視できる範囲での漏水有無
※破壊検査は行わず、あくまで目視と簡易な計測が基本です。
費用・有効期間と実態
費用:法律で定められているわけではなく、調査会社や建築士によって異なります。
一般的な相場は、戸建住宅で 5〜6万円前後、共同住宅(マンション等)で 4〜5万円前後が目安です。
有効期間:
- 戸建住宅:調査日から 1年以内
- 鉄筋コンクリート造/鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅(マンション等):調査日から 2年以内
ただし、有効期間内であっても、地震や風水害、大規模修繕などで建物の状況に変化があった場合は、その時点で効力を失います。
建物状況調査は任意の制度なので、費用負担については法律で定められていません。
- 売主が「買主に安心材料を示すため」に依頼して費用を負担するケース
- 買主が「契約前に確認したい」と考えて自ら依頼するケース
実際の現場では、まだ建物状況調査を利用する人はまだ少数派です。
ですが、だからこそ「調査済み」という安心材料を提示できれば、買主にとっては大きな差別化ポイントになります。
売却は“ゴール”ではなく、契約後こそが本当のスタートです。
建物状況調査は、あとから足元をすくわれないための小さな保険。
まだ一般的ではない今だからこそ、やっておく価値があると言えるでしょう。
まとめ
中古住宅を売るとき、多くの売主は「高く・早く売りたい」と考えます。
そして「売ってしまえば終わり」と思い込みがちです。
ところが実際には、売却後に雨漏りやシロアリ、家の傾きなどを指摘され、トラブルに発展することも少なくありません。
建物状況調査は、そんな“売主の油断”と“買主の疑念”を少しでも埋める仕組みです。
「後から足元をすくわれないために」──売却前に一度、検討してみる価値はあるはずです。