家を売却するときには、ある程度決まったステップがあります。
査定や媒介契約といった言葉は耳にしたことがあっても、「実際にはどんな順番で進むのか?」を知らない方も多いでしょう。
この記事では、家を売るときの流れを全体像からやさしく整理します。
あわせて、親が認知症になり施設に入ったことで空き家になった場合や、相続のタイミングで「親の家を売る」場合によく起こる注意点についても触れていきます。
目次
家を売る流れ(全体像)
家を売却する流れは、大きく分けると以下の6ステップです。
- 売る理由・時期を整理する
- 売却方法を決める(仲介か買取か)
- 査定を依頼する
- 媒介契約を結ぶ
- 売却活動を行う(広告・内見・交渉)
- 契約・決済・引渡し
この記事(前編)では 1〜3 を解説し、次回(後編)では 4〜6 を取り上げます。
売る理由・時期を整理する
まず大切なのは、なぜ家を売るのかを自分の中で整理することです。
- 住み替えの資金に充てたいから
- 家の維持(掃除や雑草取り)が負担だから(広い家はもう不要だから)
- 将来の相続で子ども達が揉めないようにしたいから
- この先住宅ローンの支払を続けていくことが難しいから
- 相続で実家を取得したが、この先使う予定もないから
など理由をはっきりさせることで、売却の方針も決めやすくなります。
また、売る時期を決めることも重要です。築年数が経つほど価値は下がりやすく、空き家期間が長くなると傷みも進みます。
「春や秋の転居シーズンは動きが活発」など市場の動きも参考にしましょう。
親の家の場合、親が認知症になり施設に入ったことで空き家になるケースや、相続のタイミングで売却するケースが多くあります。
このとき「思い出があるから」「まだ使うかもしれないから」と先延ばしすると、売却どころか手続き自体が進まなくなることもあります。
売却方法を決める(仲介か買取か)
不動産の売却方法には、大きく仲介か(不動産会社による)買取の2つがあります。
それぞれ、メリットデメリットがありますから、確認してみましょう。
仲介のメリット・デメリット
- 〇 高く売れる可能性がある
- × 売却まで時間がかかる(3〜6か月が一般的)
- × 内覧対応や価格交渉がわずらわしい
- × 近所に知られてしまう(広告や内覧で露見)
- × 契約不適合責任で売却後にトラブルとなる可能性
- × 査定額通りに売れないことも多い
- × 築古や事故物件だと難しい
- × 仲介手数料がかかる
やはり、仲介の一番のメリットは、高く売れる可能性がある、ということです。大切に使ってきた思い入れのある家だから、もちろん高く評価してくれる人に売りたいですよね。
ただ、思い入れが強過ぎて売出し価格が相場からかけ離れてしまうと、長期間売れ残ってしまうことにつながりますので、注意が必要です。
買取のメリット・デメリット
- 〇 すぐに現金化できる(最短数日〜数週間)
- 〇 内覧不要・交渉不要で手間がない
- 〇 近所に知られずに済む
- 〇 契約不適合責任が免除される
- 〇 築古や事故物件でも売れるケースがある
- 〇 金額が即決でわかる
- 〇 仲介手数料が不要
- × 仲介より売却金額が低くなる(1〜3割下がることが多い)
親の家の場合、古い戸建てや管理が行き届いていない空き家は、仲介では買い手がつかず「買取で進める」のが現実的なケースもあります。
査定を依頼する
不動産を売却する理由が明確になり、売却時期の見通しと立てたら、次は資産価値(相場)の把握です。
まずは自分で相場を把握
いきなり不動産会社に査定依頼するとその後しつこく営業されそうでためらう、実家の価値を知りたいけど親には知られたくない、といったこともあるかもしれません。
そんな場合は、不動産会社に査定依頼する前に自分である程度の資産価値を調べておくことは可能です。
- SUUMOやアットホームなどのポータルサイトで近隣の売出価格をチェック
- マンションなら「同じ物件の過去取引事例」が特に参考になる
こうして自分で「おおよその相場」を掴んでおくと、不動産会社から出された査定額を冷静に判断できます。
余談:強気な持ち主様
以前、松戸市にある空き家の持ち主(70代くらいのおじいさん)に売却提案をしたことがあります。「最低でも〇千万以上じゃないと、絶対に売ってやらん!」と凄まれました。
市場価格からだいぶ上振れしている価格であることをお伝えしましたが、持ち主様から「いかに価値があるのか」について熱弁をふるわれ、「そんな低い価格で売れるか!このたわけ者が!」とお叱りを受けてしまったので、早々に退散。
その後、何年かしてたまたまその物件の前を通ったら、敷地には雑草が生い茂り空き家のまま…でした。
不動産会社の選び方

どこの不動産会社に頼めばいいだろう・・・
不動産売却がうまく行くかどうかは、依頼する不動産会社選びにかかってきます。
とりあえず、「近いから」、「なんか名前を聞いたことがあるから」など、適当に選ぶと後悔することがあります。
以下では、大手の不動産会社と地元の不動産会社の主な特徴をまとめました。
大手不動産会社
- 〇 ネットワークや広告力が強い
- 〇 専門知識を持つスタッフが多い
- × 担当者の異動が多い
- × 両手仲介を優先する傾向がある
地元の不動産会社
- 〇 地域の相場・事情に詳しい
- 〇 小回りが利く、特殊事情にも柔軟
- × 広告力では大手に劣る
- × 担当者の経験や知識に差がある
ポイントは、会社名よりも「担当者を信頼できるかどうか」。説明がわかりやすいか、こちらの事情を理解して提案してくれるかを重視しましょう。
親の家の場合、名義が古いままだと査定が進まなかったり、荷物が大量に残っていて内覧できないといった問題で、最初の査定段階からつまずくこともあります。
まとめ(前編)
ここまでの流れを整理すると以下の通りです。
- 売る理由・時期を決める
- 仲介か買取かを選ぶ
- 査定を依頼する(相場調べ→会社選び)
まずはこの3つを押さえることで、家の売却はグッと現実味を帯びます。
次回は、媒介契約 → 売却活動 → 契約・引渡しについて解説します。
次回予告
次回はこちら → 第5話:不動産売却の流れをやさしく解説【後編】
媒介契約から売却活動、契約・引渡しまでの具体的なステップを解説します。