資産整理

まっとう式・家の整理 第5話: 不動産売却の流れをやさしく解説【後編】|媒介契約から引渡しまで

前回(第4話・前編)では、家を売却するときの流れのうち、
**「売る理由・時期を整理する → 仲介か買取かを選ぶ → 査定を依頼する」**までを解説しました。

ここから先が、いよいよ売却の核心です。
不動産会社と契約を結び、実際に買い手を探し、契約・引渡しへと進んでいきます。

ただ、この後半のステップには「思わぬ落とし穴」も潜んでいます。

  • 契約内容をよく理解しないままハンコを押す
  • 内見準備が不十分で印象を落とす
  • 相続登記や境界が曖昧で、直前にストップ
  • 親の家の残置物が片付かず、引渡しが遅延

不安の正体を知れば、対策が打てます。今回はあらためて全体の6ステップをおさらいした上で、後半の**「媒介契約 → 売却活動 → 解体はどうする? → 契約・引渡し」**を、親の家・相続物件の“あるある”にも触れながらやさしく解説します。


家を売る流れ(全体像のおさらい)

家を売却する流れは、大きく6つのステップに整理できます。

  1. 売る理由・時期を整理する
     住み替え・相続・資金需要など、「なぜ売るのか」「いつまでに売るのか」を明確に。ゴールを決めておくことで、判断にブレがなくなります。
  2. 仲介か買取かを選ぶ
     時間をかけて高く売るなら仲介、スピード重視で現金化するなら買取。それぞれのメリット・デメリットを理解することが大切です。
  3. 相場を把握し、査定を依頼する
     近隣相場を調べ、不動産会社に査定依頼。価格だけでなく「担当者の姿勢」を重視することが、失敗しない業者選びのコツです。
  4. 媒介契約を結ぶ ←【今回】
     正式に不動産会社に任せる契約。契約形態(一般・専任・専属専任)で動き方が変わります。
  5. 売却活動を行う ←【今回】
     広告・内見・交渉を通じて買主を探す。親の家ならではの管理・残置物リスクにも注意。
  6. 契約・決済・引渡し ←【今回】
     契約から鍵渡しまで。境界や相続登記の遅れ、残置物など“つまずきポイント”を事前に潰しておくことが重要です。

前回は【1〜3】を扱いました。今回は【4〜6】を詳しく解説します。


媒介契約の種類と選び方

媒介契約の3つの型

媒介契約は、家を売るに際して不動産会社と結ぶ契約です。これは、不動産会社に「家を売るお手伝いしてくださいね。売れたら報酬をお支払しますよ。」と約束する契約です。

この媒介契約には、以下の3種類があります。

  • 一般媒介:複数社に依頼できる。自由度は高いが、各社が“本気で動かない”リスクあり。
  • 専任媒介:1社のみ。自己発見取引OK。バランスが良く実務で最も無難。
  • 専属専任媒介:1社のみで自己発見不可。会社はフルに動くが売主の自由度は最も低い。

親の家・相続物件の注意点

  • 売主は誰か(相続人全員?代表者?)を契約前に決める
  • 遠方・複数相続人だと連絡が滞りやすい → 報告頻度を文面で固定
  • REINS公開・問い合わせ共有のルールを明記すると安心

👉 迷ったら「専任媒介+報告ルール明文化」でスタートを。


売却活動の実際と親の家リスク

広告と内見

  • SUUMO・アットホーム・REINS・チラシ・自社HPなどに掲載
  • 写真は第一印象を左右。照明・換気・片付けで「明るく清潔感ある雰囲気」に整える
  • 内見は“3分で好きになるか”が勝負

親の家特有の注意点

  • 残置物が多いと内見でマイナス印象
  • 空き家劣化(カビ臭・庭荒れ)で印象ダウン
  • 近隣配慮:空き家期間が長いと「草木や害虫」でクレームが出やすい

初動反響の目安

  • 最初の2週間:新着効果で最も熱い買い手が反応
  • 3か月:ここまでに成約しないと「売れ残り感」が出やすい
    👉 2週間で初動確認 → 3か月で方向転換を検討、の2段階チェックが現実的です。

Q&A(よくあるご質問)

①:リフォームはした方がいい?

  • 大規模リフォームは不要。費用をそのまま回収できない
  • 壊れた設備の修繕、簡単なクロス張替え、清掃・片付けで十分
    👉 ポイントは「売るためのリフォーム」ではなく「見せるための整理・修繕」。

②:解体はどうする?(古家付き or 更地)

相続や親の家の売却では「解体して更地にすべきか?」がよく問われます。

1. 古家付きで売る(現状有姿)

  • 解体費を負担せずに済む
  • リフォーム・建替えを買主が自由にできる
  • ただし、古家の印象次第では値引き要因に

2. 更地にして売る

  • 需要が高まりやすく、買主がすぐ建築できる
  • 売主が**解体費(200万円程度)**を先に負担
  • アスベスト・地中埋設物で追加費用リスク

3. 解体更地渡し(条件付き売却)

  • 契約で「売主が引渡しまでに解体」と決める方法
  • 解体費を売却代金から充当できる場合あり
  • 契約条項やスケジュール調整が必要

👉 資金に余裕があれば更地売り、負担を避けたいなら古家付き、買主と調整できるなら解体更地渡し。


契約・決済・引渡し

契約前にチェックしておく5点(最新版)

境界:杭不明・越境の有無を必ず確認。必要なら測量を先に。
相続登記:未了だと契約も決済もストップ。売出しと並行して申請を進める。
抵当権:古い抵当権が残っていることも。抹消書類の所在・金融機関の確認を忘れずに。
残置物:引渡し時に「残す・撤去する」を契約書に明記。あいまいだと当日トラブルに。
買主の利用目的(法改正ポイント):現状利用か建替え予定か未定かを必ず確認。👉 引渡し後の「建替えできない・用途変更できない」リスクを防ぐ。

契約・決済・引渡しの流れ

  • 宅建士による重要事項説明 → 契約締結 → 手付金授受
  • 決済当日は残代金受領・登記・鍵渡し・固定資産税精算
  • 鍵の引渡しを行い、所有権が正式に移転
  • 相続登記・境界確定・抵当権抹消が揃っていないと決済できない


まとめと次回予告

今回は売却の後半戦、**「媒介契約 → 売却活動 → 解体の判断 → 契約・引渡し」**を解説しました。
親の家や相続物件は、残置物・境界・相続登記・解体など独特の課題が多く、一般の売却よりも段取り力が問われます。

次回は、誰もが気になる費用と税金について。

仲介手数料・測量費用・司法書士報酬・譲渡所得税など、「結局いくらかかるの?」を松戸の実務感も交えてやさしく整理します。

これまでの記事はこちら

第1話:先延ばしの怖さ。父の人工透析から学んだこと

第2話:なぜ家の整理は“いま”必要なのか?

第3話:どうすれば家族で揉めずに整理できるのか?

第4話:不動産売却の流れをやさしく解説【前編】|親の家を売るときの注意点も

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