資産整理

不動産の売却後トラブルを防ぐ「契約不適合責任と免責」の実践ガイド

「なるべく早く、高く売りたい」

でも――「引渡した後にクレームを入れられたらどうしよう…」

中古住宅を売るとき、多くの人が一度はそう感じます。

たとえ丁寧に住み続けてきた家でも、買主から見れば「不具合」と感じる部分は必ずあります。

床のわずかなきしみ、壁の色ムラ、ドアの閉まり具合…。
そして、それがトラブルの火種になることも少なくありません。

では、どうすれば“揉めない売却”ができるのか。
答えは、契約不適合責任をただ免除するのではなく、「正しく理解して、先回りする」こと。

この記事では、
・売却後のクレームを防ぐために最低限知っておくべき考え方
・実際にトラブルを回避した事例と、現場で使える具体策
をお伝えします。

読後には、「売ったあとも安心して眠れる売却」の道筋が見えるはずです。


契約不適合責任とは?「瑕疵担保責任」と何が違うのか

2020年(令和2年)の民法改正で、「瑕疵担保責任」という古いルールが廃止され、代わりに「契約不適合責任」という考え方が導入されました。

この改正で大きく変わったのは、「欠陥があるかどうか」ではなく「契約内容に合っているかどうか」で判断されるようになった点です。

たとえば、

・契約書に「給湯器は正常に作動」と書いてあるのに、実際は壊れていた
・「雨漏りの補修済み」と説明したのに、引渡し後に再発した

このような場合、「説明と実態が一致していない」とされ、売主が責任を問われる可能性があります。
つまり、いまのルールでは「不具合があるかどうか」ではなく、「契約時の説明どおりかどうか」で判断されるようになったのです。

また、「知らなかった」では済まない場合もあります。

契約内容と実際の状態が食い違っていれば、買主は修補・代金の減額・損害賠償・契約解除などを求めることができます。
とくに個人間の売買では、旧来の瑕疵担保責任よりも売主のリスクが広がったといわれています。

さらに、買主が請求できる期間にもルールがあります。
不具合を知ってから1年以内に売主へ通知しなければ請求できず、通知をしても、知った時から5年・引渡しから10年を過ぎると時効で権利が消滅します。


「契約不適合責任を免責にすれば安心」ではない理由

売主の多くが、まず最初にこう考えます。

契約不適合責任を免除して売れば、大丈夫だろう


たしかに、一見するとそれが“安全策”に思えます。
でも実際には、免責=安心ではありません。

買主から見れば、「全部逃げる気なのか」と感じる人も少なくありません。
とくに中古住宅の売買は、お互いの信頼で成り立つ“顔の見える取引”。

そこに「契約不適合責任免責(責任は負いません)」という文言だけが並んでいれば、途端に印象が悪くなり、売出しても反響が伸びず、結果的に売れ残るリスクすらあります。

かといって、何の備えもせずに引き渡せば、後から「こんなはずではなかった」と言われる不安が残る。
この“板挟みの心理”こそが、多くの売主を悩ませる現実です。

だからこそ大切なのは、「免責にするか、しないか」という二択ではなく、「どこまで明らかにして取引するか」という姿勢です。

気になる点や経年劣化の可能性がある部分は、売却前に調査し、説明し、契約書に明記しておく。
それだけで、トラブルの9割は未然に防げます。

つまり、“隠す”より“見せる”。
この誠実さこそが、結果的に売主を守る最強のリスクヘッジになるのです。


揉めない取引を実現する3つのポイント

クレームを恐れてただ単に契約不適合責任を「免責」にして逃げるより、事前に準備しておく方が、結局は売主にとって安全です。
安全に売却を進めるための現実的な方法は以下の通りです。

1.状態を“調べる”
 ホームインスペクションなどで、建物の現況を第三者の目で確認。
 「知らなかった」では済まされない部分を、可視化しておくことが第一歩です。

2.リスクを“伝える”
 経年劣化や気になる箇所は、隠さず説明。
 買主が安心して判断できるようにしておくことが、信頼を生みます。

3.責任範囲を“明確にする”
 不具合の所在を明らかにした上で、契約不適合責任の免責を設定。
 「説明済みだからこそ免責できる」という筋を通すことが、真の防衛策です。

これらを徹底するだけで、不動産売買契約・引渡し後のトラブルはほとんど防げます。

さらに、調査報告書があれば「いつ」「どんな状態だったか」を証明できる。
万一トラブルになっても、「説明済み」「契約不適合免責」として冷静に対応できます。

一方で、何も調べずに“免責文言だけ”を契約書に入れると、買主側は「何を隠しているのだろう」と警戒し、問合せすら来なくなることがあります。

つまり、反響が減り、売れ残るリスクが高まるということです。

もしあなたが買主側なら、どう感じるでしょうか。
最初から「わかりません」「知りません」「責任も取りません」と書かれた物件に、安心して問合せできる人はまずいません。

免責は“盾”ではなく、“最後の逃げ道”にすぎません。
本当に自分を守るのは、調査と説明という“準備”そのものなのです。


買主の“質”を見極める

実務の現場では、「クロスの汚れ」「ドアのきしみ」など、どう見ても些細な部分を理由に難癖をつけてくる買主もいます。

こうした相手は、法的にはこちらが正しくても、メールや電話の応酬で時間も気力も削られます。
最終的には「勝っても疲弊する」取引になりがちです。

つまり大事なのは、法的な正しさを競うことではなく、そもそも揉めない相手と契約する環境をつくること。
そのために有効なのが、売却前の調査と説明、そして契約不適合責任免責です。

物件の状態を正確に把握し、開示しておくことで、「細かいことで文句を言うタイプ」は自然に離れていきます。
言い換えれば、徹底した事前調査、問題点の説明、そして契約不適合責任免責の設定は、“クレームを防ぐための作業”ではなく、“買主候補をふるいにかるための仕掛け”でもあるのです。

結果として残るのは、常識的に判断できる、信頼できる買主だけ。
そういう相手と取引をすれば、売主も最後まで安心していられます。


まっとう式で実現する「取引の安心」

当社の代表・田代は、大手金融機関で事業投資案件の精査(デューデリジェンス)を担当してきた経歴を持ちます。

契約交渉の現場でリスクを見極め、合意を形成してきた経験から、不動産取引における「見えないトラブルの芽」を早い段階で摘み取ることが可能です。

私たちが目指しているのは、売主と買主のどちらかが得をする取引ではなく、双方が納得し、引き渡し後も安心して暮らせる取引です。
それが、“まっとう式”が大切にしているスタンスです。

あなたの物件に合わせたリスクの見極め方や、調査・特約の組み方についてもご相談を承っています。

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