
相続登記をすれば手続きは終わり…
と思っていませんか。
実はその後こそが、本当の始まりです。
相続した家や土地が“共有”のまま残ると、時間とともにトラブルの火種が増えていきます。
兄弟姉妹で意見が合わず、売るにも動けず、結果的に“負動産”として放置される。
そんなケースは珍しくありません。
この記事では、相続共有不動産がなぜうまく売れないのか、そしてどうすればトラブルを避けられるのかを、具体例を交えながら解説します。
読んだあとには、「自分たちは今どの段階で止まっているのか」「何から始めればいいのか」が明確になります。
目次
相続で不動産が「共有」になる仕組みと売却が難しい理由
相続が発生すると、被相続人(亡くなった方)の財産は一時的に相続人全員の共有になります。
つまり、家や土地も含め「みんなのもの」になるわけです。
不動産は分けにくいため、「公平にするために共有にしよう」となることが多いのですが、これが後のトラブルの芽になります。
なぜなら、不動産の共有は“計算上は公平”でも、“現実には不自由”だからです。
単に売ること「以外」に決めるべき項目とは
共有不動産を売却するためには、単に「売ることに賛成」だけでは足りません。
実際には、次のすべてについて共有者全員の同意が必要です。
- 売出価格をいくらにするか
- 解体や測量などの準備をするか
- 費用を誰がどの割合で負担するか
- 値下げをするかどうか
- どの不動産会社に依頼するか
- いつ契約・引渡しをするか
これらのどれか一つでも意見が割れた時点で、手続きは進みません。
法律上、共有不動産の売却決定は多数決ではなく、全員一致が原則です。
兄弟姉妹のうち1人でも首を縦に振らなければ、売ることができないのです。
そして、こうした細かい判断ほど、実は揉めやすい。
「測量費を出したくない」「解体には反対」「値下げはまだ早い」――
こうした意見のズレが積み重なり、やがて誰も動かないまま年月が過ぎていきます。
具体例で考える共有不動産の価値
たとえば、3,000万円の価値がある土地を3人で共有しているとします。
共有持分の所有者は「自分の分は、1,000万円の資産価値がある」と思いがちですが、市場ではそうは評価されません。
買主から見れば、その持分だけを購入しても自由に使えないため、価値は半額以下にしかならないことが多いのです。
共有者は、「何を言ってるだ!そんな安値なわけないだろ!」と売却を渋ります。
私は共有者から罵声を浴びせられた経験が。。(汗)
購入価格を提示する側は、リスクを負う分、「全体を単純に人数で割った価格では買えない…」となります。
その結果、両者の折り合いがつかず、結局誰も動かないまま放置されます。
こうして“誰のものでもない不動産”が生まれます。
共有解消の先送りが招く3つのリスク
相続の初期段階では、つい「とりあえず登記だけ済ませよう」と考えがちです。
しかし本来は、その時に「将来どう処分するか」「費用をどう負担するか」まで話し合っておく必要があります。
そうした取り決めをしないまま共有状態が続くと、やがて次のようなリスクが積み上がります。
法的リスク
共有者の一人が認知症になったり、亡くなったりすると、その瞬間に手続きが止まります。
たった一人の印鑑が押せないだけで、売却も解体も進められません。
裁判所に申請し、後見人を立てることで話を進められる道はありますが、時間や後見人への報酬がかかります。
そもそも、その後見人(第三者の弁護士等)が売却に賛成する保証はどこにもありません。
経済的リスク
放置していても、固定費は確実にかかります。
築古の戸建であれば、固定資産税とわずかな維持費程度で済むかもしれません。
しかし、マンションとなると話は別です。
管理費・修繕積立金は年数とともに上昇し、築30年を超えると月額4万円を超えるケースも珍しくありません。
加えて、空室状態でもこれらの支払い義務は続きます。
つまり、使っていないのに出費だけは止まらない。
そうして“持っているだけでお金が減っていく不動産”ができあがります。
感情的リスク
兄弟仲が良かった家族でも、お金の話になると感情がぶつかります。
「俺ばかり負担している」「姉は協力しない」――。
一度関係がこじれると、家族関係の修復は困難です。
さらに厄介なのは、「今は仲良くても、次の世代で揉める」という構造です。
たとえば、兄弟2人で相続して共有にしておいた場合。
その共有がそれぞれの子ども世代に引き継がれると、所有者は一気に4人、6人へと増えていきます。
中には、連絡の取れない人、海外在住の人、相続を放棄した人も出てきます。
結果、誰も意思決定できず、誰も責任を取れない状態になります。
“不公平のないように”と共有にしたことが、
次の世代では“誰も動かせない負動産”へと変わってしまうのです。
これが現実です。
共有不動産をうまく整理できる人の共通点
共有不動産の売却や整理がスムーズに進む人たちには、共通する特徴があります。
それは、次の3つです。
- 信頼される代表者がいること
 家族の中に、「あの人が言うなら任せよう」と思われる人がいる。
 代表者の存在は、手続きのスピードと合意形成の鍵になります。
 逆に、誰も決められない家族ほど前に進みません。
- 事前に“使い道”を共有していること
 「いずれ売却して現金化しよう」「解体して更地にしよう」といった共通の認識があると、判断の軸がぶれません。
 方向性がそろっているだけで、トラブルの9割は防げます。
- 専門家を早めに関与させていること
 相続登記の段階で不動産会社や司法書士に相談し、将来の売却シミュレーションを聞いておく。
 「いくらで売れるか」「何が障害になりそうか」を早めに知ることで、対立の芽を摘むことができます。
逆に、これらが欠けている場合は、時間の経過とともに問題が複雑化していきます。
「損をしたくない」が最大の損失になる理由
共有不動産の難しさは、法律や手続きよりも“心理”にあります。
人は「損をしたくない」と思うあまり、何も決められなくなるのです。
「今売ったら安いから、もう少し待とう」
「兄弟の意見が合わないから、今は動かないでおこう」
そうして時間が経つうちに、建物は老朽化し、売却価格はさらに下がります。
最終的には、持分の価値がゼロに近づき、“行動しなかったこと”そのものが最大の損失になるのです。
場合によっては、価格を割り引いてでも早期に売却する方が、結果的に得をすることがあります。
共有のまま放置するのは、誰にとっても損でしかありません。
行動を先送りにしないために
「うちは仲がいいから大丈夫」――。
その油断こそが、もっとも危険です。
相続共有不動産は、時間が経つほど問題が複雑化します。
今のうちに、家族で一度話し合ってみてください。
もし話し合いが難しい場合は、専門家に間に入ってもらうことをおすすめします。
“できるうちに動く”。
それが、相続の不安を安心に変える唯一の方法です。
私たちは、松戸市を中心に相続や空き家の整理をサポートしてきました。
「誰に相談すればいいかわからない」という段階でも構いません。
まずは状況を整理するところから、一緒に始めましょう。
 
    






