資産整理

相続した不動産を売却する前に必ず確認すべき6つのポイント【完全ガイド】

親から実家を相続したけれど、自分は住まない。
じゃあ売ろうか――

そう考える方は多いものです。

しかし、いざ動き出すと・・・

登記の手続きが済んでいない

相続人同士で意見が合わない

境界があいまい

…といった“想定外の壁”にぶつかることが少なくありません。

相続した不動産は、単に“売る”と決めただけでは動きません。
登記や合意形成、測量、税金、建物の状態など、多くの準備をクリアしてはじめてスムーズに売却できます。

この記事では、相続不動産を売却する前に必ず確認しておきたい6つのポイントを、現場でよくあるトラブル事例を交えながらわかりやすく解説します。
『後で困らないために今なにをすべきか』が分かる内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。


相続登記を済ませないと売れない

相続で不動産を受け継いだら、まずやらなければならないのが「相続登記」です。これは、亡くなった方の名義から、相続人の名義に変更する手続きのことです。

2024年4月からは法律が改正され、相続登記は義務化されました。正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料(罰金のようなもの)が科される可能性もあります。

さらに重要なのは、登記を済ませていなければ、不動産売買の契約そのものが成立しないという点です。つまり「売りたい」と思っても、名義が亡くなった方のままでは、取引ができないのです。

実際の現場でも、相続登記が済んでいないために売却が大幅に遅れたケースは珍しくありません。

たとえば・・・
「兄弟姉妹が多く、誰がどれだけ相続するかで意見がまとまらず、登記に着手するまでに1年かかった」
「父が他界し母と2人姉妹が相続人となったが、名義変更しないうちに母が認知症になり手続きができなくなった」
といった話もあります。

売却をスムーズに進めたいなら、まずは相続登記を最優先に進めることが大切です。司法書士など専門家に相談すれば、必要な書類や流れも整理してもらえます。


相続人全員の合意形成が必要

不動産は相続人全員の共有財産です。そのため「自分が代表で勝手に売る」ということはできません。売却するには、相続人全員の合意が不可欠です。

実務では「遺産分割協議」を行い、誰がどの不動産を相続するかを話し合います。その結果を「遺産分割協議書」として書面化し、全員の署名・押印をもらうことで、初めて売却に進むことができます。

もし相続人の一人でも反対すれば、売却はストップします。兄弟姉妹の中に「思い出があるから売りたくない」と言う人がいたり、感情的な対立が起きたりすると、売却が何年も進まないこともあります。

たとえば実際にあったケースでは、「長男は売却希望、次男は賃貸に出して家賃収入を得たい、三女は残したい」という三者三様の意見でまとまらず、結局家庭裁判所に調停を申し立てることになった例もあります。

相続不動産を売るには、こうした合意形成を避けて通れません。早い段階で相続人同士で話し合いを始めること、必要であれば弁護士など第三者を交えて整理することが、スムーズな売却の第一歩です。


土地の境界・測量問題

相続した不動産を売却するときに意外と大きなハードルになるのが「境界問題」です。

古い土地では境界がはっきりしていないことが少なくありません。昔の分筆や地積測量図が不正確だったり、境界杭が失われていたりすると、「隣の土地とどこまでが自分のものなのか」が曖昧になります。

この状態のまま売却しようとすると、買主や金融機関は不安を感じます。

住宅ローンを使う買主であれば、金融機関から「確定測量図を出してください」と求められるケースも多いです。境界が曖昧な土地は敬遠され、結果として一般的な買い手が見つからない、あるいは大幅に値引きを迫られることになります。

現場でも「隣地との境界がわからないために、売却までに半年以上かかった」という事例はよくあります。場合によっては隣地所有者との立ち会いや合意が必要になることもあり、トラブルの種になりがちです。

売却をスムーズに進めるには、早めに土地家屋調査士へ依頼し、確定測量を行っておくのが安心です。費用は数十万円かかりますが、その分売却がしやすくなり、結局は価格面でもプラスになることが多いです。


建物の扱いを決める

相続した家を売却する場合、まず決めるべきなのは「建物を残すのか、更地にするのか」です。

更地にして売る場合

買主はハウスメーカーや建売業者など、土地として活用する層が中心になります。
この場合、古家は価値ゼロとみなされることが多く、むしろ解体費用がマイナス査定になります。

木造30坪程度の住宅なら200〜300万円前後が目安ですが、費用は条件によって大きく変動します。

  • アスベストの有無
  • 重機が入れるかどうか(道路幅や敷地条件)
  • 廃材処分費の高騰
  • 周辺環境(近隣養生が必要かどうか)

こうした要素で金額は上下し、300万円を超えることも珍しくありません。正確な費用は必ず現地見積もりが必要です。

建物を残して売る場合

建物を残して売るといっても、状況はさまざまです。

  • 少しのリフォームでそのまま住める状態の建物
  • フルリフォームが必要と見られる築古住宅
  • 買主が「どうせ解体する」と考えているケース

いずれかによって売却の難易度や価格は大きく変わります。
雨漏り・シロアリ・耐震性など、建物のコンディションは価格交渉の大きな材料になる点を押さえておきましょう。

設計図書・検査済証の有無

建物を残して売る場合、設計図書や検査済証が揃っていると買主にとって安心材料にはなります。
住宅ローンやリフォームローンを利用しやすくなり、取引がスムーズになることもあります。

ただし、「ある=必ず安心」とは限りません。
たとえば旧耐震基準で建てられた住宅では、検査済証があっても現行基準を満たさず、耐震補強が必要になることがあります。

一方で、書類がなくても即「違法建築」とは限りません。
ただし「違法でないかどうか確認できない」ために買主や金融機関が不安を抱きやすく、結果的に売却が難航することがあります。

2025年4月に確認申請制度が改正されました。この改正により、現在は小規模住宅でもリフォームや建替えに確認申請が必要となっています。

つまり『建物を残して売るか、更地にして売るか』の判断は、買主の負担やコストに直結するため、従来以上に慎重に考える必要があります。


税金(譲渡所得税・特例)

相続した不動産を売却すると、譲渡所得税がかかります。ただし条件を満たせば大きな節税ができる特例があります。

代表的なのが 3,000万円特別控除

亡くなった親が住んでいた家を相続し、一定の条件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円まで控除できます。これによって多くの場合は税金がゼロになるか、かなり抑えられます。

さらに 「空き家特例」 もあります。

耐震性が不足する古い家を取り壊すなどの条件を満たせば、こちらも最大3,000万円までの控除が受けられます。

ただし適用期限が厳しく、相続発生から「3年10か月以内」に売却する必要があります。期限を過ぎると使えず、数百万円単位の税負担が発生することもあります。

現場では「親が亡くなって5年後に売却を検討したら、控除が使えず税金が数百万円発生してしまった」というケースもあります。

相続不動産の売却にかかる税金は複雑なので、最終的な判断は税理士に任せるのが確実です。

ただし、不動産会社も一般的な制度の概要くらいは説明できて当然。

もし税金の話を振ってみて、まるで他人事のように『さあ…知りません』という反応しか返ってこないようなら、その担当者に売却を任せるのは少し不安です。税制の基本に疎いということは、取引全体に対する理解や経験も浅い可能性があるからです。


空き家を放置するリスク

「とりあえずそのままにしておこう」と空き家を放置するのは非常に危険です。

空き家を放置していると、まず“管理不全空家”とみなされる恐れがあります。庭木が伸び放題だったり、雨漏りで外観が傷んでいたり、ゴミが放置されていると、この段階で行政から改善を求められることがあります。

さらに状態が悪化し、『倒壊の危険がある』『衛生上有害』『景観を著しく損なう』などに該当すると、“特定空家”に指定されます。

特定空家に指定されると、これまで適用されていた固定資産税の住宅用地特例(1/6軽減)が外れ、税額が一気に跳ね上がります。
加えて、改善命令や最終的には行政代執行による強制撤去の対象となる可能性もあります。


まとめ

相続不動産を売却するには、

  • 相続登記を済ませる
  • 相続人全員の合意を得る
  • 境界・測量をクリアにする
  • 建物を残すか更地にするか決める
  • 税金の特例を活用する
  • 空き家を放置しない

こうした複数のポイントを押さえる必要があります。

そして2025年4月からの確認申請制度改正も加わり、建物の扱いがこれまで以上に重要になります。

不動産の売却は一人で進めるには複雑です。早めに専門家に相談し、後悔のない選択をしましょう。

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