親から実家を引き継ぐとき、多くの方が迷うのが「相続にするか、生前贈与にするか」です。
結論から言えば、税金だけで考えるなら圧倒的に相続の方が有利。
ところが実務の現場では、相続まで待つことで「親が認知症になり名義変更が止まる」「兄弟間で揉めて売却できない」など、税金以上に深刻なリスクが潜んでいます。
そこでこの記事では、松戸市の実家をモデルに「相続 vs 生前贈与」の税負担を試算し、さらに相続を待つことのリスクとその対策を整理しました。
最後までお読みいただければ、「結局どっちが良いの?」と悩む方にとって、判断のヒントになるはずです。
1. 相続と生前贈与、仕組みの違い
- 相続税
基礎控除が大きい(3,000万円+600万円×法定相続人)。多くの家庭では課税ゼロ〜軽い負担で済む。 - 贈与税
基礎控除は年間110万円のみ。税率は最高55%と相続税よりも厳しい。
👉 仕組み上、スタート地点から「贈与は不利」なのです。
2. 松戸市モデルで比較してみた
※評価額は「相続税評価額(=土地は路線価方式、建物は固定資産税評価額)」を基準としています。
ケース① 実家の評価額2,000万円(築35年戸建)
- 相続の場合
基礎控除:3,000万円+600万円×相続人2人=4,200万円
評価額2,000万円 < 基礎控除4,200万円
👉 相続税課税額 ゼロ - 贈与の場合
課税価格:2,000万円−110万円=1,889万円
贈与税額:1,889万円×55%−640万円=約400万円
+登録免許税(40万円)+不動産取得税(60万円)
👉 合計 約500万円の負担
ケース② 駅近戸建 3,000万円
- 相続の場合
基礎控除4,200万円 > 評価額3,000万円
👉 相続税課税額 ゼロ - 贈与の場合
課税価格:3,000万円−110万円=2,890万円
贈与税額:2,890万円×55%−640万円=約950万円
+登録免許税(60万円)+不動産取得税(90万円)
👉 合計 約1,100万円の負担
ケース③ 駅前マンション 1億円
- 相続の場合
基礎控除:4,200万円
課税価格:1億円−4,200万円=5,800万円
相続税率:30〜40%ゾーン
税額目安:約1,500〜2,000万円
※小規模宅地等の特例(80%減)を使えば大幅圧縮可能 - 贈与の場合
課税価格:1億円−110万円=9,989万円
贈与税額:9,989万円×55%−640万円=約4,800万円
+登録免許税(200万円)+不動産取得税(300万円)
👉 合計 約5,300万円の負担
数字で見ると一目瞭然。税金だけで見れば相続が圧倒的に有利ですね。
3. それでも生前贈与が選ばれる理由(相続を待つリスク)
税金だけで見れば相続一択に見えます。
しかし「相続開始まで待つ」こと自体にリスクが潜んでいます。
- 認知症リスク
親が認知症になると、売却や名義変更が一切できなくなります。 - 遺産分割トラブルの防止
相続開始後に兄弟姉妹で揉めるケースは少なくありません。生前に整理しておけば安心です。 - 資産の早期活用
子世代が早くから売却・担保利用をしたい場合、生前贈与で動かせるようにしておくメリットがあります。
4. 相続以外の方法が選ばれるケース
- 相続時精算課税制度
親から子へ不動産を贈与する際に2,500万円まで非課税にでき、最終的に相続時に精算。大きな不動産を早めに移したいときに使える。 - 小規模宅地等の特例(相続時)
親が住んでいた家を相続するとき、330㎡まで評価額を80%減できる。相続時の強力な節税策。 - 家族信託
認知症で名義変更が止まるリスクを回避できる。税優遇はないが実務的な安心感がある。
5. よくある誤解:実家承継に使えない制度
- 暦年贈与(年間110万円)
現金移転には使えるが、不動産を少しずつ贈与するのは非現実的。しかも形式的に続けると「定期贈与」として否認リスクあり。 - 住宅取得資金贈与の特例
子が新しく住宅を買うときの制度。親の家を引き継ぐケースには使えない。 - 教育資金贈与の特例
孫世代に教育費をまとめて渡す制度。実家承継には無関係。
👉 実家を承継するなら「相続時精算課税」や「小規模宅地の特例」が本筋です。
まとめ
- 税金面だけで見れば相続の方が圧倒的に有利。
- しかし、相続まで待つと「認知症」「兄弟トラブル」「資産活用できない」リスクがある。
- そのため、生前贈与や家族信託といった方法が選ばれるケースもある。
- 誤解されやすい「暦年贈与」「住宅取得資金贈与」などは、実家承継には使えないので注意。
👉 税金だけでなく、実務リスクまで踏まえて「ご家庭に合った承継方法」を検討することが大切です。
実家の相続や生前贈与は、税金だけでなく家族それぞれの事情によって答えが変わります。
ただ、「いきなり専門家に相談するのはハードルが高い…」と感じる方も多いのではないでしょうか。
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「まずは状況を整理したい」という段階でも大歓迎です。ぜひ一度ご活用ください。