
建物の検査済証はありますか?
不動産を売却しようとすると、不動産会社や金融機関から確認されるのが「検査済証はありますか?」という点です。
検査済証は、建物が建築基準法に適合して建てられたことを証明する大切な書類であり、売却やリフォーム、住宅ローン審査に直結します。
しかし築年数の古い住宅、特に1980年代以前に建てられた戸建では、検査済証が手元にないケースが少なくありません。実際に相続で引き継いだ物件の売却相談では「検査済証が見つからない」「そもそも交付されていない」といった事例が多く見られます。
この記事では、
- 検査済証とは何か、を正しく理解する
- 検査済証がない場合でも売却する方法(松戸市での具体的な対応策)
- 2025年4月の建築基準法改正がもたらす影響と今取るべき準備
を整理して解説します。読めば、相続や築古の不動産を売却する際に「検査済証がないから売れないのでは?」という不安を解消し、スムーズに売却を進めるための具体的な行動がわかります。
目次
検査済証とは
まず押さえておきたいのは、「建築確認済証」と「検査済証」の違いです。
- 建築確認済証:建築計画が建築基準法に適合しているか、工事着工前に確認を受けたときに交付される書類
- 検査済証:工事完了後に完了検査を受け、実際の建物が計画通りに建てられ法令に適合していると認められたときに交付される書類
検査済証は「建物が法令に適合して建てられている」という“お墨付き”です。
売却の場面では、買主が住宅ローンを利用する際に金融機関がチェックする材料になり、リフォームや用途変更のときにも根拠資料となります。
逆に検査済証がないと、「違法建築ではないか」「将来リフォームできないのではないか」と疑念を持たれ、売却が不利になりやすいのです。
検査済証がない不動産を売却する方法(松戸市の場合)
検査済証がない場合でも売却は可能です。
ただし、何も手を打たなければ買主や金融機関から不安視され、価格交渉で不利になったり、契約が進まなくなるリスクがあります。ここでは、松戸市で取れる具体的な対応を解説します。
検査済証を紛失したケース

(検査済証を受領した記憶があるけど、)どこかにしまい込んで見当たらない。

引っ越しの際に紛失したかもしれない
こういうケースも少なくありません。その場合は、次のように対応します。
- 検査済証は再発行できません。
- 松戸市では、松戸市役所 建築指導課で「建築確認台帳記載事項証明書」(俗に「登載証明」と呼ばれることもある)を取得できます。
- この証明書には建築確認番号や検査済証番号、工事種別などが記載され、検査済証が交付されていた事実を証明できます。
- 手数料は300円程度。売却前に取得しておくと安心です。
完了検査を受けていないケース

そもそも完了検査を受けていない!検査済証なんて持っていない!
というケースもあります。特に築古の戸建に多いパターンです。
その後の制度強化により、現在では実施率は9割を超えていますが、相続で出てくる築古戸建は「検査済証なし」に当たりやすい世代です。
1998年時点での全国の完了検査実施率は、約38%にとどまっていました。実施していないのが結構普通だったのですね。
そのため1980年代以前に建てられた住宅は、検査済証が交付されていない可能性が高いといえます。
その後の制度強化により、現在では実施率は9割を超えています。ただ、相続で出てくる築古戸建は「検査済証なし」に当たりやすい世代です。
既存不適格建物とは
検査済証がないケースを考えるときに、あわせて知っておきたいのが「既存不適格建物」という考え方です。
これは「建築当時は適法に建てられた建物が、その後の法改正や都市計画の見直しによって、今の基準には合わなくなっている」状態を指します。
違法建築ではありませんが、売却や建替えのときに制約を受ける可能性があるため注意が必要です。
既存不適格建物の具体例
- 接道要件
 建築当時は幅員3.6mの道路に接していて適法だったが、現在は建築基準法で原則4m以上が必要とされるため、再建築の際にはセットバックが求められる。
- 耐震基準
 1981年以前に建てられた住宅は「旧耐震基準」で設計されており、現行の「新耐震基準」を満たしていない。倒壊リスクがあるとみなされ、金融機関や買主が慎重になる。
- 建ぺい率・容積率の変更
 当時は建ぺい率70%で建てられたが、その後の用途地域の見直しで60%に引き下げられ、現状の建物が基準を超えている。
- 用途地域の変更
 かつては住宅が建てられる地域だったが、都市計画の改定で別用途に指定され、同規模の住宅を新築できなくなった。
既存不適格建物が売却に与える影響
既存不適格建物に該当する場合、売却そのものが不可能になるわけではありません。
ただし、買主や金融機関の評価が下がるため、結果的に「売れにくい」「値下げを迫られる」といった影響が出やすくなります。
- 買主からの評価が下がりやすい(購入を見送られる、または価格交渉を強く求められる)
- 金融機関から融資がつきにくくなる(買主がローンを組みにくくなる)
- リフォーム・増改築に制限がかかる可能性(買主が購入後の活用に不安を持つ)
- 重要事項説明で伝えなければトラブルになる恐れ(告知漏れで後から紛争化するリスク)
といった影響があります。
検査済証がなくても売却を検討できる可能性(12条5項報告の活用)

検査済証がないから、売却できるか自信なくなってきた・・・
と悲観的な気持ちになったかもしれません。
検査済証がなくても、売却をあきらめる必要はありません。
その補助手段の一つが「建築基準法12条5項に基づく報告制度(通称:12条5項報告)」です。
これは本来「建物の適法性に疑問があるときに行政庁が建築主に報告を求める」制度ですが、実務上、検査済証がない物件の適法性を説明する材料の一つとして扱われることがあります。
ただし、この制度が必ず検査済証の代わりになるわけではなく、行政の判断や物件の状況によって評価が異なるため、あくまで「売却に向けた補助手段のひとつ」と考えてください。
松戸市での利用方法
松戸市でもこの制度を利用でき、役所に報告を行うことで「当時の基準に沿って建てられている」ことを示せる可能性があります。
専門的な書類の準備は必要ですが、この報告をしておけば、買主や金融機関に対して「違法建築ではない」と説明できる安心材料になります。
- 松戸市は人口50万人を超えるため、建築主事が配置されている都市です。
- したがって、12条5項報告は松戸市役所の建築指導課に直接提出できます。
- 実際の様式は松戸市の公式サイトからダウンロード可能です。
 👉 松戸市 建築基準法第12条第5項に係る報告書
売主が知っておいた方がいい理由
検査済証がなくても、対応策を知っていれば売却を前向きに進められる可能性があります。(確実ではなく、あくまで可能性です。)
知らないままでいると「値下げしかない」と思い込みやすいですが、制度を理解していれば交渉や説明の幅が広がります。
- 売却の選択肢を広げられる:行政への報告によって、適法性を補える可能性がある
- 価格交渉で不利になりにくい:買主や金融機関に「違法建築ではない」と説明できる材料になり得る
- トラブルを防げる:契約後に「違法では?」と疑われて揉めるリスクを軽減できる
売主自身が制度の存在を知っているだけでも、不動産会社との相談がスムーズになり、安心感を持って売却活動に臨めます。
不動産会社を見極めるポイント
売主がすべての制度を自分で使いこなすのは現実的ではありません。
だからこそ、不動産会社がどれだけ知識を持ち、選択肢を示してくれるかが大切です。
- 知識の浅い会社の対応例
 「検査済証がないとローンがつきません。ですから値下げするしかありませんね」
 → こう言われると、売主は不安のまま価格を下げるしかなくなってしまいます。
- 知識のある会社の対応例
 「検査済証は残っていませんが、松戸市では台帳記載事項証明書や12条5項報告を使って補う方法があります。こうした手続を踏めば、買主側や金融機関に説明できる可能性があります」
 → 代替策を提案してくれるので、売主は価格を守りながら売却の道筋を考えられます。
どちらの会社に任せるかで、最終的に残るお金も安心感も大きく変わります。
「値下げしかない」と言う会社ではなく、「選択肢を提示できる会社」を選ぶこと。
これが、売主が不動産会社を見極めるための大切なポイントです。を提示してくれる会社」を選ぶことが、後悔しない売却につながります。
まとめ
- 検査済証は、建物が建築基準法に適合して建てられたことを示す大切な書類。
- 築古の戸建では検査済証が残っていないケースが多いが、売却が不可能になるわけではない。
- 紛失している場合は「建築確認台帳記載事項証明書」、交付されていない場合は「12条5項報告」や「建築基準法適合状況調査」を活用することで、適法性を補える可能性がある。
- 2025年4月の法改正(4号特例縮小)により、検査済証や設計図書がない築古物件はこれまで以上に厳しい目で見られる。
そして何より大事なのは、こうした制度を理解し、売主に具体的な選択肢を示せる不動産会社を選ぶことです。
「値下げしかありません」と言う会社ではなく、「補う方法があります」と提案してくれる会社に任せることで、安心と納得のある売却が実現できます。
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法律や制度は、変化しそして年々複雑になってきています。
私たち 株式会社まっとう は、常にアンテナを高く張り、法改正や行政の動向をいち早くキャッチし、最新の情報をアップデートすることを心がけています。
「検査済証がないから売れないのでは?」と不安に思う方でも、状況に応じた解決策を一緒に探り、最適な売却につなげるお手伝いをいたします。
松戸市での相続不動産の売却についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
 
    






