資産整理

不動産査定にはどんな種類がある?注意点と高額査定の落とし穴を解説

うちならもっと高く売れます!

空き家となった実家を売却するため、不動産会社3社に依頼。
その中で、他社の査定額より500万円も高く提示してきたのはA社だった。

思いがけない提示額に、正直心がグラグラ揺れた。

思い入れのある実家を、こんなにも高く評価してくれるなんて──さすがは大手のA社だ。

そう喜んでA社と専任媒介契約を結んだものの、その後半年経っても売れず…。
最後は値下げを重ね、結局ほかの会社の査定額より安い価格で手放すことになった。

実はこれは“よくある話”です。

不動産を売却する際、誰もが最初に気になるのは「いくらで売れるのか」という査定額。
ただし査定には種類があり、さらに提示された金額をそのまま信じると、痛い目に遭うことがあります。

この記事では、不動産査定の種類と、初心者が特に気をつけたい注意点を解説します。


簡易査定(机上査定)とは?メリットと注意点

書類やデータベースをもとに算出する査定方法です。
路線価、公示地価、過去の取引事例、近隣の販売価格などを参考にして「このくらい」と金額を出します。

  • メリット:手軽でスピードが早い
  • デメリット:建物の劣化や日当たり、境界など現地を見なければ分からない要素は反映できない

一括査定サイトはどういう仕組み?利用時の注意点

最近はネット上で「複数社にまとめて査定を依頼できる」一括査定サイトも広まっています。
便利に見えますが、裏側はこうです。

  • 運営しているのは不動産会社ではなくWebサービス会社
  • 広告で集めた「査定したい人の情報」を、1件あたり1.5万〜2万円で不動産会社に販売
  • 例えば同じエリアに10社が登録していたら、1件で20万円の売上がWebサービス会社に発生
  • 一方の不動産会社は「課金は確定」なのに、媒介契約を取れるかは不確実

この仕組みでは、不動産会社はとにかく媒介契約を取らないと元が取れません。
そのため「他社より高い査定額」を出してでも契約を勝ち取りに行く。
市場価格通りかどうか、実際に売れるかどうかは二の次になりがちです。

結果、

  • Webサービス会社 → 確実に利益を得る(責任は取らない)
  • 不動産会社 → 課金リスクだけ背負う
  • 売主 → 根拠のない高額査定に振り回される

まさに「Webサービス会社の養分」になってしまう構図です。

イメージで言えば、宝くじと同じ。
2万円払っても1等が当たるかどうかは完全に運任せ。
不動産会社も同じで、2万円払って情報を買っても、媒介契約という“当たり”を引けるかは不確実です。
一方で宝くじの売り手=運営会社は「買った時点で確実に収益」を得ている。

「買わなきゃ当たらない!」というコピーの裏で、当たるかどうかは売る側にとってどうでもいいんです。
これと同じで、一括査定の運営会社も情報を流しさえすればよく、実際に成約しようがしまいが、ただの冷やかし客だろうが──
「そんなのカンケーねー、そんなのカンケーねー、うっ、おっぱっぴー!」 ってわけです。

当社にも勧誘電話が殺到した

実際、当社にも一括査定サイトの営業電話が山ほどかかってきました。
でもこのカラクリを知っていたので、すべて断ってきました。

しまいには「一括査定サイトなんて、もうオワコンっすよね~」なんて返していたら、さすがに電話もかかってこなくなりました(笑)。

もちろん、これは業者側の体験談です。
売主のみなさんには直接関係ないように思えるかもしれません。

でも実際には──高値査定に釣られて媒介契約を結んでしまうと、相場から外れた価格で売り出すことになります。
すると…

  • いつまでも買い手がつかない
  • 「売れ残ってる=何か訳ありでは?」と勘ぐられる
  • 新鮮味がなくなり、市場での価値が下がる
  • 結局は値下げを繰り返す羽目になる

つまり、一括査定のカラクリを知らないと、最後にしわ寄せを受けるのは売主自身なんです。

AI査定は使える?限界と注意点

最近は「AI査定」という言葉も耳にするようになりました。
“AI”と聞くと、なんとなく最新で正確そうに思えますよね。

でも実際には、従来の机上査定と同じデータを使っているにすぎません。
参考にしているのは路線価や過去の取引事例。つまり「数字の世界」でしか判断できないのです。

AIには、こんなことは分かりません。

  • 家の中に入ったときのカビ臭さ
  • 前の道路を走るダンプカーの振動
  • 隣地の樹木が屋根に覆いかぶさっている様子
  • ご近所のおじさんが「ここは水はけ悪いんだよね」とポロッと言った一言

これらは実際に現地を見て、場合によっては人間同士が会話して初めて分かることです。

AI査定は“便利なお試しツール”としては役立ちますが、
残念ながら 雨漏りのシミもシロアリの足音も、AIにはまだ聞こえない のです。


訪問査定とは?正確さより“納得感”が大事

担当者が実際に現地を訪れて査定する方法です。
建物の劣化、隣地との境界、前面道路、日当たりなど、データでは分からない要素を確認します。

ただし、ここで誤解してはいけません。
訪問査定だからといって「正確な価格がピタリと出る」わけではないのです。
実際に“いくらで売れるか”を決めるのは、市場=買い手だからです。

訪問査定の本当の価値は「根拠を聞いて腹落ちできること」。
たとえば担当者から、

  • 「近所で似た物件が◯月にいくらで売れました」
  • 「この道路幅だと再建築に制限があるので価格に影響します」
    といった説明を受ければ、単なる数字の羅列ではなく「なるほど、そういう理由でこの価格か」と納得できます。

言ってみれば、**机上査定が“数字だけの世界”なら、訪問査定は“数字にストーリーを与える作業”**です。
雨漏りのシミを見て「これは買い手からマイナス要因ですね」と教えてくれるとか、隣の空き地を指差して「将来マンションになると日当たりが変わります」なんて話してくれる。
AIには絶対できない、“現地ならではの気付き”を持ち帰れるのが訪問査定なんです。

極端な話、カビ臭い部屋に入った瞬間に顔をしかめられる──これも立派な査定材料。
AIが鼻をつまんだり、「ここ湿気すごいっすね」と冗談を言ってくれる日は、まだ当分来ないでしょう(笑)。


まとめ|不動産査定で損をしないための鉄則

  • 簡易査定はあくまで参考価格
  • 一括査定は仕組み上「高額査定」が出やすいので要注意
  • AI査定は便利だが、人の感覚には及ばない
  • 訪問査定は「正確さ」ではなく「納得感」を得るために行う

不動産売却で損をしないためには、複数社の訪問査定を受け、金額の根拠を冷静に比べることが欠かせません。


査定のご相談は当社へ

実際に査定を受けてみると、数字だけでは見えないことがたくさんあります。
「どのくらいで売れるのか?」という金額以上に、なぜその金額なのかを理解することが大切です。

当社は一括査定サイトには参加していません。
その理由は、記事でお伝えした通り「売主に不利益をもたらす仕組みだから」です。

だからこそ、一人ひとりの物件に向き合い、根拠ある査定を行うことを大事にしています。

「実家をどうしようか迷っている」
「空き家を売るべきか残すべきか悩んでいる」
──そんな段階でもかまいません。

お気軽にご相談ください。

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