「3,000万円で売れたから、そのまま3,000万が手元に残る!」
……そう思っていたのに、決済してみたら「あれ?ずいぶん少ないな」という声は少なくありません。
実際には、売却にはさまざまな費用と税金がかかるからです。
この記事は 全国的に一般的な相場感 をベースにまとめています。地域や物件条件によって変動するため、あくまで目安としてご覧ください。
今回は、売却時にかかるお金を 必ずかかる費用 と 条件によってかかる費用 に分けて、わかりやすく整理します。
目次
必ずかかる費用
仲介手数料
仲介で不動産会社に「売却をお願いします」と依頼する際の成功報酬。売れなければゼロですが、成約すれば最も大きな支出となります。(買取の場合は、仲介手数料はかかりません。)
- 上限は 売却価格×3%+6万円+消費税
- 例)3,000万円で売却 → 約105万円
登記費用(抵当権抹消など)
住宅ローンを完済していても、登記簿に抵当権が残っている場合は抹消が必要です。司法書士に依頼して 2〜3万円程度。
印紙税
売買契約書に貼る印紙。契約金額によって 数千円〜数万円。
「え?こんなのもいるの?」と驚かれますが、法律で定められた必須の費用です。
条件によってかかる費用(物件や売り方次第)
測量・境界確定
隣地との境界があいまいだと、買主から敬遠されやすいです。
確定測量には 30〜100万円前後かかり、数週間〜数か月の時間も必要。
高額ですが、やっておくことで安心感が増し、売却もスムーズになります。
インスペクション(建物状況調査)
いわば「家の健康診断」。専門家が雨漏り・シロアリ・劣化などをチェックします。
- 費用:5〜10万円程度
- 売主が必須でやる必要はありません。
- ただし実施すると買主の安心感につながり、契約不適合責任トラブルの防止にも役立ちます。
解体費用とアスベスト調査
古家付き土地では「解体して更地にして売る」か「現況のまま売る」かを選ぶ必要があります。
- 木造住宅の解体:坪3〜5万円(30坪で100〜150万円前後)
- 2022年以降は、解体や大規模改修の前に アスベスト調査が義務化。数万円〜十数万円が追加で必要。
ただし、必ず売主が解体しなければならないわけではありません。現況のまま売り、価格に織り込んで調整することも多いです。
税金
譲渡所得税・住民税
売却で利益(譲渡所得)が出ると課税されます。
- 所有期間5年以下 → 短期譲渡(約39%課税)
- 所有期間5年超 → 長期譲渡(約20%課税)
ここで注意!
「譲渡所得=売却価格 −(取得費+譲渡費用)」で計算されます。
勘違いしやすいケースとその理由
- 10年前に3,000万円で購入
- 3,000万円で売却
「利益ゼロだから課税なし!」と思いがちですが、実際には課税される可能性があります。
理由1:減価償却がある
建物部分は年数が経つと価値が減るとみなされます。
契約書や領収書があっても、建物部分は減価償却により取得費が目減りするため、帳簿上は「利益あり」とされます。
理由2:取得費を証明できない場合
購入時の契約書や領収書を紛失している場合、取得費を証明できなくなります。
相続で引き継いだ古い物件でも、被相続人が当時の契約書や領収書を残していれば、それをもとに取得費を証明することは可能です。
しかし、書類が見つからないケースでは、救済的な方法として「概算取得費」が認められており、売却価格の5%を取得費とみなして計算することになります。
ただしこれは“最低限の救済措置”にすぎず、実際の購入価格よりはるかに低くなることが多いです。
例えば3,000万円で売却した場合、
- 取得費は150万円とみなされる
- 3,000万 − 150万 = 2,850万円が利益扱い
- 長期譲渡なら約570万円の税金!
👉 「利益がないのに税金がかかる」典型例です。
だからこそ、購入時の契約書・領収書を探し出して保存しておくことが非常に大切です。
固定資産税・都市計画税の日割精算
固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されますが、実務では引渡し日に応じて買主と日割り精算するのが一般的です。
節税の代表例
- 居住用財産の3,000万円特別控除:自宅を売却した場合、多くのケースで非課税に。
- 相続空き家の特例:一定条件を満たせば相続不動産の売却で3,000万円控除。
- 長期譲渡の有利性:所有期間5年超で売ると税率が下がる。
※これらの特例はすべて、適用条件・期限・手続きが細かく決められています。必ず税理士など専門家に確認してください。
手取り額の考え方(いちばん大事なところ)
最終的に「いくら残るのか」をイメージしておきましょう。
式はシンプルです:
手取り額 ≒ 売却価格 −(仲介手数料+登記+印紙+測量・解体など) − 税金
例)3,000万円で売却した場合
- 仲介手数料:約105万円
- 測量:約60万円
- インスペクション:約8万円
- 登記・印紙など:約5万円
→ 合計:約178万円
この場合、3,000万 − 178万 = 約2,822万円 が手取りの目安です。
さらにここから税金がかかるかどうかは、取得費や特例の有無で変わります。
チェックリスト(読んだら確認!)
- 仲介手数料の概算を確認した
- 登記・印紙など小さな必須費用を確認した
- 測量・インスペ・解体をやるかどうか仮決めした
- 解体やリフォームをする場合にアスベスト調査が必要か確認した
- 取得費の資料(契約書・領収書など)を探した
- 特例(3,000万円控除や相続特例)の候補を確認した
- 手取り額が具体的にいくらになるか試算してみた
まとめ
- 「売却価格=手取り」ではありません。
- 仲介手数料・登記・測量・インスペ・解体・税金などが差し引かれます。
- 特に 取得費と減価償却の考え方 を知らないと「利益ゼロなのに課税」という落とし穴にはまります。
- だからこそ、最初から“手取りベース”で計画することが大切です。
次回予告
第7話:不動産売却でありがちな3つの失敗について
あとで後悔しないためのコツを解説します
これまでの記事はこちら
第1話:先延ばしの怖さ。父の人工透析から学んだこと
第2話:なぜ家の整理は“いま”必要なのか?