「売ったら終わり」「あとはお金が残るだけ」──そう思っていませんか?
実際の現場では、売却後に思わぬ落とし穴にはまるケースが少なくありません。
今回は、よくある3つの失敗談を紹介しながら、そこから学べることを整理します。
目次
失敗談その1:税金を甘く見て資金ショート
松戸市在住のBさんは、築40年の自宅を売却し、手元に2,800万円が残りました。
「これで老後も安心」と思い、学費やリフォームに次々とお金を使ったそうです。
ところが翌年、税務署から届いた納付書には「譲渡所得税 320万円」。
資金はすでに使ってしまい、結局は親戚に借金して支払う羽目になりました。
学び:売却前に必ず確認すべき税金特例
第6話「不動産売却にかかる費用・税金」で、不動産売却の際の譲渡所得の計算方法と勘違いしやすいケースを取り上げました。
ここでは、不動産の譲渡所得税を減らせる可能性がある、税制上の特典について押さえておきましょう。
- 所有期間10年超の軽減税率
10年以上住んだ自宅を売る場合、税率が通常より低くなる(ざっくり20%→14%くらい)。 - 3,000万円特別控除
自宅を売った利益から最大3,000万円まで“なかったこと”にできる。利益が少なければほぼ非課税になる。 - 居住用財産の買換え特例
古い家を売って新しい家に住み替える場合、課税を将来に先延ばしできる。 - 譲渡損失の損益通算・繰越控除
売却で赤字なら、給与や年金と相殺して税金が戻る/翌年以降の税金を減らせる。
👉 つまり「利益が出ても損しても、税金は動く」のが不動産売却。
売却前に“自分がどの特例に当てはまるか”を試算しておくことが鉄則です。
失敗談その2:親族間の口約束で大揉め
相続で実家を売却したCさん兄弟。
「売ったら3等分でいいよね」と口約束だけで進め、長男が代表して契約を進めました。
いざ代金を分ける段になって、長男が「リフォーム費を負担した分を考慮して!」と主張。
話し合いは平行線となり、弁護士を立てることに。
結果、弁護士費用だけで200万円以上が消えてしまいました。
学び:分配トラブルを避ける具体策
- 専用口座を作る
代表者の個人口座に入れると不信感のもと。専用口座をつくり、そこに売却代金を入れる。 - 経費精算ルールを明文化
測量費やリフォーム費は「領収書があるものだけ経費」とする。交通費や雑費は経費対象外。 - 最終分配方法を合意書にする
「経費控除後、残りを兄弟3等分」など具体的に書き、全員が署名捺印。 - 通帳や入出金を全員で共有
誰が見ても「いくら入って、いくら出て、いくら残った」がわかる状態にする。
👉 数字を“見える化”することが、唯一のトラブル防止策。
「身内だから大丈夫」と思った瞬間に揉め事が始まります。
失敗談その3:残置物トラブルで追加費用
相続した家を売却したDさん。遠方在住のため、現地確認は不動産仲介業者に任せていました。
契約は「現況有姿渡し」だったので、古い家具や照明はそのまま残して引渡し。
ところが買主から「処分は売主負担ですよね?」と請求が入りました。
実際の処分費用はトラック数台分、約40万円。
「まさかこんなにかかるとは…」とDさんは頭を抱えることに。
学び:残置物トラブルを防ぐ契約書の工夫
- 残す/撤去する物をリスト化して契約書に添付
例:エアコン・照明は残す/家具・家電は撤去/庭の物置は残すが、所有権は買主に移す。 - 処分費用の負担者を明記
売主が払うのか、買主が払うのかをはっきり書く。 - 「現況渡し」と書くだけでは不十分
売主の中には「現況=そのまま全部残していい」と思い込む人もいる。
だからこそ「誰が、どこまで処理するか」を細かく書く必要がある。
👉 不動産契約の世界では、「書いてないこと=後で揉めること」。
残置物は特に、口頭ではなく契約書に落とし込むのが絶対条件です。
まとめ
不動産売却で多い失敗は、
- 税金を軽視して資金ショート
- 親族間の口約束で大揉め
- 残置物の扱いでトラブル
どれも「曖昧にしたまま進めた」結果起きることです。
売却は“ゴール”ではなく“スタート”。
あとで後悔しないために、売却前から「税金・分配・残置物」を具体的に決めておきましょう。
次回予告
第8話は、松戸市で売却が成功するかどうかのカギになる不動産会社の選び方について。
どんな判断基準で選べばいいのかを詳しく解説します。
これまでの記事はこちら
第1話:先延ばしの怖さ。父の人工透析から学んだこと
第2話:なぜ家の整理は“いま”必要なのか?
第4話:不動産売却の流れをやさしく解説【前編】|親の家を売るときの注意点も
第5話:不動産売却の流れをやさしく解説【後編】|媒介契約から引渡しまで
第6話:不動産売却にかかる費用・税金をやさしく整理