
境界標が見つからない。
いざ土地や戸建(実家など)を売ろうとした際、こういうことは意外とよくあります。
境界標──つまり土地の境界を示す目印が見当たらないと、

これじゃ売れないのでは?
と不安に感じているかもしれません。
でも安心してください。境界標がなくても売却する方法はあります。
確かに、境界が不明確だと、買主は二の足を踏み、価格が下がったり、契約が進まなかったりすることがあります。
最悪の場合、「買手がつかない」という事態にもなりかねません。
けれど、対処法はきちんとあります。
この記事では、売主が知っておくべき 5つの注意点 と、状況に応じて選べる 5つの解決策 を具体的に整理しました。
読み終えたときには、あなたが 「結局どうすべきか?」 の答えを掴めるはずです。
目次
境界標とは?
境界標とは、土地の境界を示すために設置される杭や鋲などの物理的な目印です。
代表的な種類は次のようなものがあります。
- 石杭
- コンクリート杭
- 金属プレート(鋲)
- プラスチック杭
境界標は「ここからここまでがあなたの土地」と明示する証拠であり、売却や建築の際に大きな意味を持ちます。
ただし境界標そのものが境界を「決める」わけではなく、あくまで隣地所有者などの合意で決まった境界を示す目印である点がポイントです。
境界の確認方法と設置方法は?
境界をどう確認するかには、いくつかの段階があります。費用や手間、安心感の度合いも変わります。
確定測量(理想)
 土地家屋調査士(不動産の測量や境界確定を扱う国家資格者)が測量を行い、隣地所有者の立会いを経て境界を正式に確定するものです。
 その結果として確定測量図が作成され、境界標も設置されます。
 費用はかかりますが、売却価格や買主の信頼につながる、もっとも確実な方法です。
現況測量(簡易)
 隣地所有者の立会いはなく、「とりあえず今の状態(現況)」を測って図面にする方法です。
 確定力は弱く、後に「隣地と境界が違う」と指摘されるリスクは残りますが、売却時の説明材料にはなります。
協議・交渉ベース
 隣地所有者との話し合いや、過去の資料・記憶を頼りに「ここが境界だろう」と確認する方法です。
 費用はかかりませんが、根拠が弱く、将来のトラブルの火種になりやすい点に注意が必要です。
境界標が見当たらない場合の対応方法は?
売却しようとしたときに境界標が見つからない──そんなときに考えられる対応はいくつかあります。
公図や地積測量図を確認する
法務局で取得できる公図(土地の大まかな位置関係を示す図面)や、地積測量図(過去に作られた測量図面)を確認して境界の手がかりを探します。
ただし必ずしも正確ではなく、参考程度にしかならないこともあります。
土地家屋調査士に相談する
現況測量を行い、少なくとも「現状ここまでが土地」という線を示せるようにします。
隣地と合意して境界標を設置する
隣地所有者との話し合いで境界線を確認し、双方の合意のもとに境界標を設置する方法です。
理想的ではありますが、実際には隣地が非協力的で進まないケースもあります。
境界標を明示しないまま売却する
「現況有姿(今ある状態のまま)」「契約不適合責任免責(売却後の欠陥について売主は責任を負わない特約)」といった形で、境界非明示で売却することも可能です。
その場合は価格や買手の層に影響します。
こうした対応にはそれぞれリスクや限界があり、どれを選ぶかで売却条件は大きく変わります。
このあと紹介する 「5つの注意点」と「5つの解決策」 で、より具体的に整理していきます。
境界標がないまま売却するときの5つの注意点
境界標が見当たらないまま土地や戸建を売却しようとする場合、以下のような点に注意が必要です。
買主から敬遠されるリスク
境界が曖昧だと買主は安心できません。結果として「他の物件にしよう」と判断され、売却のチャンスを逃す可能性があります。
売却後に買主からクレームを受けるリスク
境界不明のまま契約すると、購入後に隣地と揉めるのは買主です。
この場合、契約不適合責任を理由に、損害賠償や契約解除を求められるリスクもあるため注意が必要です。
査定・契約が進みにくくなるリスク
不動産会社や買主は境界不明の物件を慎重に扱います。
そのため査定額が低めに出たり、契約段階で調整に時間がかかることが多く、売却スケジュールが遅れやすくなります。
買手が限られるリスク
境界不明物件は一般の個人買主に敬遠されやすく、最終的に買主は不動産業者や投資家といったプロに限られる傾向があります。
売主にとっては選択肢が減り、条件面で不利になりやすいです。
売却価格が下がるリスク
境界が不明確な分、買主はリスクを価格に織り込みます。
実際の買主は不動産業者や投資家などのプロであり、結果として相場より低い価格での売却を受け入れざるを得ない可能性が高くなります。
境界標がない場合に売主が取りうる5つの選択肢
境界標がないまま売却しようとする場合、売主には大きく2つの方向性があります。ひとつは境界標を設置して“ない状態”を解消すること。もうひとつは、境界標がない状態を前提に売却を進めることです。
境界標を設置して“ない状態”を解消する
- 確定測量を行い境界標を設置する
 土地家屋調査士に依頼し、隣地所有者の立会いを得て境界を確定。新しく境界標を設置し、確定測量図を作成します。費用はかかりますが、最も安心で、個人の買主にも売りやすく、価格も有利に働きます。
- 隣地と合意して新たに境界標を設置する
 隣地所有者との話し合いで境界線を確認し、双方の合意のもとに境界標を設置する方法です。確定測量ほど厳密ではない場合もありますが、売却に向けて安心感を与える材料になります。
境界標がない状態を前提に売却する
- 現況測量を行う
 隣地立会いはなく、現況を測って図面化する方法です。確定力は弱いですが、「現状ここまでが土地です」と買主に説明できる資料になります。
- 単独測量を行い、買主に説明する
 隣地が非協力的で立会いが得られない場合、土地家屋調査士による単独測量を実施。境界標がないことを前提に、「現況ではこうなっています」と説明して売却することが可能です。
- 現況有姿+免責で売却する
 境界標を設けずに「今ある状態のまま(=現況有姿)」で売却し、さらに「売却後に欠陥が見つかっても売主は責任を負わない(=契約不適合責任を免責)」とする方法です。
 この場合、買主は「境界が不明でも、自分でリスクを引き受ける」という前提で購入することになります。一般の個人買主は避けるため、実際には不動産業者や投資家といったプロが中心です。価格は下がりますが、売主にとっては測量や境界調整の手間・費用をかけずに早期処分できるというメリットがあります。
境界標がなくても買手は現れるの?
境界標がないまま売却する場合、最大の関心事は「そんな条件でも買手はつくのか?」という点です。
結論から言えば、一般の個人買主はまず手を出しません(出せません)。
境界が不明確な土地や戸建はリスクが大きすぎて、住宅購入目的の買主には敬遠されます。
そのため、実際に検討するのは不動産業者や投資家といったプロが中心です。
彼らは「利回り」「再販売時の利益」を前提に、リスクをシビアに価格へ織り込みます。
つまり売主にとっては、
- 売却自体は可能だが
- 相場より低めの価格での取引になる可能性が高い
という現実を理解しておく必要があります。
測量や境界標設置の費用負担とタイミング
境界標を新たに設置する場合や測量を行う場合、気になるのは「誰が費用を負担するのか」と「いつやるのか」です。
誰が費用を負担するの?
 原則は売主負担です。境界を明確にして安心材料を提供するのは売主の責務(売主が当然果たすべき役割と考えられていること)と考えられています。
 ただし実務では、安価な物件では「現況のまま売却し、買主が自費で測量する」という交渉になることもあります。
いつ測量や境界標設置をしたらいいの?
一般的には売却活動を始める前、あるいは契約前に済ませておくのが望ましいです。確定測量図(隣地立会いのもと正式に確定した境界を示す図面)や境界標があれば、買主に安心感を与え、取引がスムーズに進みます。
 一方で、早期処分を優先する場合はあえて測量をせず、買主が決まってから必要に応じて調整するケースもあります。
結局、売主はどうすればいいの?
境界標が見当たらないまま売却を進めるとき、売主が一番迷うのは「結局、どんな準備や条件で動けばいいのか」ということです。
すべてにお金も時間もかけるのは難しいし、かといって手を抜きすぎれば売れ残ったり価格を下げざるを得なくなります。
そこで大事なのは、自分にとって何を優先したいのか──高値なのか、安心なのか、スピードなのかをはっきりさせることです。
高く売りたい/一般の買主に売りたい場合
→確定測量をして境界標を明示
「どうせ売るなら少しでも高く」と思うのが人情です。しっかり測量して境界標を明示すれば、個人の買主にも安心して選んでもらえます。
費用は抑えたいが、最低限の安心は欲しい場合
→現況測量を行い、可能なら隣地と調整
 「そこまでお金はかけられない、でも揉め事は避けたい」という方にはこの方法。図面を示せるだけで買主の安心感はグッと違います。
とにかく早く処分したい/価格は割り切る場合
→ 現況有姿+免責(境界非明示)で業者・投資家へ売却
 「もう維持する気力もないし、早く片付けたい」という場合はこの選択肢。価格は下がりますが、“これ以上悩まなくて済む”という安心が得られます。
最終的には「時間」「費用」「安心感」のどれを優先するかで選択肢が決まります。
つまり売却とは、単に物件を手放す作業ではなく、「自分がどう区切りをつけたいのか」という気持ちの整理でもあるのです。
迷ったら、一人で抱え込まずにご相談ください。
状況に応じて最適な方法を一緒に考え、売主様にとって後悔のない選択ができるようサポートいたします。
 
    






