
そのまま売れる?
リフォームしてから?
解体まで必要?
家を整理しようと思ったとき、多くの人が最初に迷うのは「この家、どういう形で手放すか」です。
そのまま売るのか、リフォームして売るのか、あるいは解体して更地にするのか。
どれを選ぶかによって、かかる費用も、かかる時間も、最終的に手元に残るお金も大きく変わります。
しかも「正解」は一つではなく、立地や建物の状態、買い手が誰かによってベストな答えは変わってきます。
だからこそ大事なのは「他人の一般論に振り回されず、自分の条件に合った納得解を選ぶ」こと。
この第10話では、まず「そのまま売却」という選択肢から整理していきます。
選択肢① そのまま売却(現状有姿)
向いている条件(立地・買主像・築年)
「そのまま売る」とは、文字通りリフォームや解体をせず、現状のまま買主に引き渡す形です。
この方法が有効になるのは、以下のような条件が揃っている場合です。
- 立地が良い:駅徒歩圏や生活利便性が高い場所
- 買主が建替え前提:中古の建物には目を向けず、土地として価値を見ている
- 築浅〜中程度:多少の古さがあっても住める状態で、買主が自分好みにリフォームを想定している
松戸市でも、駅近や人気学区のエリアでは「そのまま売却」で十分に需要があり、むしろ改修せずに現状渡しを望む買主も少なくありません。
そのまま売却のメリット/デメリット
メリット
- 初期費用がかからない(リフォーム費用ゼロ、解体費用ゼロ)
- 売却までのスピードが早い(工期を待たずに売り出せる)
- 買主が自由にリフォームや建替えをできる
デメリット
- 見た目の古さがマイナス評価になり、価格交渉の余地を与えやすい
- 「住める家」として探す買主には印象が悪く、購入層が限られる
- 残置物が多いと内見時の印象が下がる
早期成約の整え方(最低限の清掃・残置整理)
「そのまま売る」といっても、まったく手をつけないのは逆効果。
最低限のポイントを押さえるだけで、買主の印象は大きく変わります。
- 残置物を整理する:古い家具や大量の荷物は撤去してスッキリ見せる
- 簡易清掃を入れる:特に水回りと玄関は印象を左右する
- 通電・通水の確認:内見時に生活のイメージが湧くように整えておく
これだけでも「放置された家」という印象から「手を加えれば住めそうな家」に変わり、価格交渉で不利になりにくくなります。
選択肢② リフォームして売却
向いている条件(実需層が見込める立地・築)
「少し直せば住める」という状態の家は、リフォームを施すことで購入者の印象を大きく変えられます。
特に次のような条件では効果が出やすいです。
- 駅近や人気エリアで、購入層がファミリーや共働き世帯
- 築20〜30年程度で、建物自体はまだしっかりしている
- 競合物件との差別化が必要なとき
松戸でも、北松戸や新八柱のように“生活利便性が高い×中古需要がある”エリアでは、軽い改修を加えて売ることで「住める家」として評価され、成約が早まるケースが少なくありません。
費用と回収の考え方(数百万円は慎重に)
リフォームには当然費用がかかります。
たとえば、内装全面リフォームなら少なくとも300〜500万円以上、水回りを新品に交換すれば100〜200万円。
問題は、それをかけても売値が必ずしも上がるとは限らないこと。
むしろ「買主が自分好みに直したい」場合、過剰リフォームは逆効果です。
大事なのは、
- かけた費用が売値にどれだけ転化するか
- 売却期間を短縮できるか
「100万円かけて+200万円で売れる」なら投資効果ありですが、
「300万円かけて+100万円しか伸びない」なら、ただの持ち出しです。
効く“軽改修”(水回り表層・照明・外構の見栄え)
実際に効果が出やすいのは、費用を抑えながら“印象を変える”改修です。
- 壁紙や床の張り替え:汚れや黄ばみを一新
- 水回りのクリーニングや表層リフォーム:新品交換より費用対効果が高い
- 照明・カーテン・植栽の整え:内見時の第一印象を左右する
こうした軽いリフォームや演出で「この家ならすぐ住めそう」と思わせられれば、値引き交渉を防ぎ、早期成約につながります。
選択肢③ 解体して売却
向いている条件(築古・劣化・越境懸念)
「解体して更地で売る」という選択は、建物の状態が悪く、住まいとしての価値がほとんどないケースで有効です。
- 築40年以上で老朽化が著しい
- 雨漏りやシロアリ被害など、大規模修繕が必要
- 越境や再建築に関わる懸念があり、買主が建替えを前提に考える
費用の目安と注意点
解体費用は建物の構造や大きさによって異なりますが、目安は坪あたり3〜5万円。
たとえば30坪の木造住宅なら150〜200万円前後。鉄骨造やRC造になると倍近くかかることもあります。
さらに注意したいのはアスベスト調査・処理。
2022年からは解体前の調査・届出が義務化され、吹付け材や外壁材にアスベストが含まれていると追加費用が発生します。
固定資産税の特例が外れるリスク
解体後は「住宅用地の特例」が外れるため、固定資産税が一気に上がることがあります。
松戸市でも例外ではなく、土地の課税評価額によっては2〜3倍に跳ね上がるケースも。
つまり「解体してすぐに売却する」なら問題ありませんが、解体したまま長期間放置すると税負担が重くなる点には要注意です。
松戸市での解体補助制度
松戸市では、老朽危険家屋や特定空家に指定されそうな物件に対し、解体費用の一部を補助する制度が設けられています(年度ごとに予算枠あり)。
また、放置すると「特定空家」に認定され、行政から指導・固定資産税の特例解除・最悪は行政代執行…というリスクも。
解体を選ぶかどうかの判断では、補助制度の有無や申請タイミングを確認することが欠かせません。
👉 詳しくは当社まとめ記事
松戸市の空き家・解体に使える補助金をわかりやすく解説【令和7年度版】
松戸ローカルの視点
制度の有無は先に確認(補助金・特定空家)
松戸市では、老朽化した空き家や特定空家に指定されそうな建物を対象に、解体費用の一部を補助する制度が設けられています。
補助の条件や上限額は年度ごとに変動するため、必ず最新情報をチェックしてから判断すべきです。
また、放置が長引けば「特定空家」として認定され、固定資産税の特例解除や行政からの指導・勧告につながる可能性もあります。制度は“使えるうちに使う”、これが鉄則です。
駅近は“軽改修”、郊外は“更地需要”が出やすい
同じ松戸市内でも、エリアによってニーズは大きく異なります。
- 駅近・生活利便エリア:
築年数が経っていても、軽リフォームや清掃で「住める家」として売り出せば需要が見込める。特にファミリー層や共働き世帯は“駅からの距離”を優先する傾向があります。 - 郊外・バス便エリア:
建物への評価は低くなりがちで、むしろ「更地にして土地として使う」需要の方が厚い。駐車場や小規模宅地としての利用が検討されることも多いです。
つまり、「リフォーム」か「解体」かの判断は、立地条件で大きく傾くということです。
測量・境界の先行対応が効くケース
もうひとつ松戸で多いのが、境界が曖昧なままの古い宅地です。
境界が未確定だと、買主はローンが組みにくく、せっかくの売却チャンスを逃すことになりかねません。
先に確定測量を済ませておけば、
- 「安心感」を与え、価格交渉を防ぎやすい
- 更地売却でも建築計画が立てやすい
というメリットがあります。
解体を検討する際には「測量とセット」で準備を進めると、後のトラブルを防ぎ、売却スピードも上がります。
ケーススタディ(手取りで横並び比較)
駅近・築30年=軽改修+演出で上振れ
松戸駅徒歩12分の築30年戸建。建物自体はしっかりしており、水回りにやや古さが見られる程度。
- そのまま売却 → 想定価格 2,800万円
- 軽リフォーム(壁紙・床・水回り表層改修100万円) → 費用100万円で売却価格3,100万円
→ 手取り差額+200万円。短期で回収でき、むしろ利益が出たパターン。
郊外・築45年=解体→更地売却で早期現金化
五香駅からバス15分、築45年の木造住宅。雨漏りもあり、住むには大規模修繕が必要。
- そのまま売却 → 想定価格 500万円(ほぼ土地値だが建物がマイナス要因)
- リフォーム(全面改修600万円) → かけても需要薄。売却価格はせいぜい700〜800万円
- 解体(150〜200万円)→更地売却 → 費用をかけても土地価格1,000万円で売却可能
→ 手取り+300万円前後改善。
築古で修繕リスクが高い場合、「解体」という先行投資がむしろリターンを大きくする例です。
建替え前提の買主想定=現状有姿で十分
北小金エリア、築25年の戸建。土地は整形地で70坪あり、買主は「二世帯住宅を新築したい」と考えている層。
- そのまま売却 → 想定価格 3,200万円で即成約
- リフォーム100万円投下 → 買主が建替え前提なので無意味。費用がそのままロスに。
- 解体150〜200万円→更地売却 → 買主がどうせ解体するため、売主が負担する必要はないケース。
この場合、現状有姿で売る方が最も合理的。余計な投資をせずに済み、スピード売却につながる。
チェックリスト
「そのまま売却・リフォーム・解体」、どれが自分に合うか迷ったときは、次のポイントを確認してみてください。
- 想定買主は「家」か「土地」か
- 費用→売値への転化見込み
- 1年持ち越しのコスト(固定資産税・維持管理・劣化リスク)
- 「売却価格 − 費用 = 手取り」を3パターン並べて比較できているか
まとめ
家の整理において、「そのまま売却・リフォーム・解体」のどれを選ぶかに唯一の正解はありません。
大事なのは「買主像」「費用と回収の見込み」「時間と手間」を同じ土俵に並べて比べ、自分が納得できる判断をすることです。
忘れてはいけないのは、放置こそ最大のコストだということ。
時間が経てば建物は劣化し、修繕費は膨らみ、固定資産税などの維持費も積み重なります。
資産はあの世に持っていけません。
持っていけるのは、そこで過ごした思い出だけ。
だからこそ、いま動くことで「安心」と「手取り」を最大化できます。
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次回予告
次回(第11話)は「買主からの値下げ交渉にどう向き合うか」です。
多くの売主が直面する“交渉のリアル”と、冷静に判断するためのポイントをお伝えします。
これまでの記事はこちら
第1話:先延ばしの怖さ。父の人工透析から学んだこと
第2話:なぜ家の整理は“いま”必要なのか?
第4話:不動産売却の流れをやさしく解説【前編】|親の家を売るときの注意点も
第5話:不動産売却の流れをやさしく解説【後編】|媒介契約から引渡しまで
第6話:不動産売却にかかる費用・税金をやさしく整理
第7話:不動産売却でありがちな失敗3選 ── あとで後悔しないために