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思い出の詰まった実家、どうする? 相続不動産「賢く売却」のススメ

ご自身がそこで育ち、たくさんの思い出が詰まった実家。親御さんが亡くなり、今は空き家となっているその大切な場所を受け継いだ今、様々な想いが去来し、すぐに手放すという決断には、ためらいがあるかもしれません。

「いつか帰るかもしれない」「このまま残しておきたい」

──そんな気持ちは、決して不自然なことではありません。

しかし、現実という側面にも目を向けてみましょう。時が経つにつれて、不動産の維持には費用がかさみ、管理の負担も増していきます。

そして、もし売却という選択肢を選ぶのであれば、実は「一定期間内」に行うことで、税制上の大きなメリットを受けられる可能性があるのです。

もしかしたら、思い出を手放すことに寂しさや後ろめたさを感じているかもしれません。もちろん、思い出をそっと心の中にしまっておくというのも一つの考えですが、時は流れていくものです。

今回は、相続した空き家を売却する際に受けられる税制上の特典とその要件について、具体的に見ていきましょう。

この記事を最後までお読みいただくことで、きっと賢い選択をするための知識が得られ、あなたのこれからの人生がより豊かに、そして心も軽やかになるはずです。

期間限定!相続した空き家の売却で得られる税制上の特典とは?

このパートでは、その「一定期間内」に相続した空き家を売却することで得られる、具体的な税制上の特典について解説していきます。知っておくことで、あなたの不動産売却の判断を大きく左右する可能性がある、重要な情報です。

その特別な税制上の特典とは、「相続空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」 というものです。

これは、一定の要件を満たす空き家を相続した方が、定められた期間内にその空き家を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できるという、非常に大きなメリットのある制度です。

譲渡所得とは、不動産を売却した際に得られる利益のことです。通常、この利益には所得税や住民税がかかりますが、この特別控除を利用することで、これらの税金を大幅に減らすことができる可能性があります。

例えば、実家(相続した空き家)を売却して2,500万円の利益が出たとします。この特別控除が適用されれば、譲渡所得は0円となり、税金はかかりません。もし、3,500万円の利益が出た場合でも、3,000万円が控除され、課税対象となるのは500万円のみとなります。

この特別控除は、空き家の有効活用を促進し、老朽化した空き家の流通を活性化させる目的で設けられました。思い出の詰まった実家(相続した空き家)を、税制面で優遇されながら、次の世代へと繋ぐことができる可能性があるのです。

ただし、この大きなメリットを受けるためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。次のパートでは、その具体的な要件について詳しく見ていきましょう。

見逃し厳禁!3,000万円特別控除を受けるための重要要件

前のパートでは、相続した空き家を一定期間内に売却することで、譲渡所得から最大3,000万円が控除されるという、非常に魅力的な税制上の特典について解説しました。

しかし、この特別な控除を受けるためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。ここでは、その具体的な内容を一つひとつ丁寧に見ていきましょう。

1.売却期間に関する要件:いつまでに売る必要がある?

この特別控除を受けるためには、原則として、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その空き家(または空き家を取り壊した後の土地)の売買契約を締結する必要があります。

例えば、2025年の4月に親御さんが亡くなった場合、その3年後の2028年の12月31日までが期限となります。 ただし、この期間内に売買契約を締結する必要がある点に注意が必要です。不動産の売却には、買い手探しや契約手続きなど、ある程度の時間がかかるため、早めに準備を始めることが大切です。

2.建物の要件:どんな空き家が対象になる?

売却する相続した空き家が、以下のいずれかのケースに該当する必要があります。

【ケース1:原則】以下のすべての要件を満たす古い空き家

  • 被相続人が居住していた家屋であること: 亡くなった方が、亡くなる直前までその家に住んでいたことが必要です。別荘や賃貸に出していた家は対象になりません。
  • 相続開始から売却まで空き家であること: 相続してから売却するまで、その家が誰の居住の用にも供されていないことが必要です。一時的にご自身が住んだ場合なども、原則として対象外となります。
  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること。
  • 区分所有建物登記がされている建物(マンションなど)でないこと。
  • 売却価格が1億円以下であること。
  • 親子や夫婦などの特別関係者への売却ではないこと。

【ケース2:例外】一定の耐震基準を満たす空き家

上記のケース1に該当しない場合でも、以下のいずれかの要件を満たす空き家であれば、特別控除の対象となる可能性があります。

  • 1981年(昭和56年)6月1日以後に建築されたものであること。(この場合は、区分所有建物であっても対象となる可能性があります。)
  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築されたもので、一定の耐震改修工事を行い、耐震基準に適合していることについて証明されたものであること。(この場合も、区分所有建物であっても対象となる可能性があります。)

このように、建築された時期や耐震性によって、対象となる要件が異なります。ご自身の空き家がどのケースに当てはまるかを確認することが重要です。

特に、マンションなどの区分所有建物については、耐震基準に関する要件が複雑になる場合があるため、専門家への相談を推奨します。

3.売却に関する要件:誰に、いくらで売る?

  • 売却価格が1億円以下であること: 売却代金の合計額が1億円を超えないことが条件です。
  • 親子や夫婦などの特別関係者への売却ではないこと: 配偶者、直系血族(父母、祖父母、子、孫など)、生計を一にする親族、内縁関係にある人、これらの人たちが役員を務める法人などへの売却は対象外です。

4.その他の要件

  • 相続登記を済ませていること: 売却する前に、あなた名義への相続登記が完了している必要があります。
  • 過去にこの特例を受けていないこと: 被相続人または相続人が、過去にこの特例の適用を受けていないことが必要です
  • 相続税の申告期限から3年以内の売却であること: 通常、上記の売却期間の要件を満たしていれば、こちらも満たすことになります。

これらの要件をすべて満たす必要があります。ご自身の状況と照らし合わせて、確認してみてください。もし一つでも満たせない要件がある場合は、この特別控除の適用を受けることができませんので注意が必要です。

まとめ:賢く売却するために、まずは私たちにご相談ください

ここまで、相続した空き家を一定期間内に売却することで得られる税制上の特典「相続空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」と、その適用を受けるための重要な要件について詳しく解説してきました。

思い出の詰まった実家を手放すことは、心に様々な感情をもたらすかもしれません。しかし、現実的な視点で見れば、空き家の維持管理には費用と労力がかかり、放置すれば老朽化が進むことになります。

そんな中、この特別控除は、売却という選択肢を考える上で、非常に大きなメリットとなります。最大3,000万円の控除は、譲渡所得にかかる税金を大幅に軽減し、あなたの手元に残る資金を大きく左右する可能性があります。

ただし、この特典を受けるためには、売却期間、建物の条件、売却の相手方や金額など、複数の重要な要件を満たす必要があります。特に、売却期間については、原則として相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限があるため、注意が必要です。

今回の記事を読んで、ご自身の状況がこの特別控除の対象となる可能性があると感じたなら、ぜひ最初の一歩として、私たちにご相談くださいね

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