「そのうちやろう」と思っていたことに限って、なぜか一番タイミングを逃してしまうものです。
先日も、こんな話を聞きました。
お母さんが体調を崩して入院したのをきっかけに、実家を整理しようと動き出したところ──名義がそのまま、おまけに母親がすでに認知症の診断を受けていたため、家を売ることも貸すこともできなくなっていた。
「もっと前に準備しておけば……」
そう嘆いていました。
ただ、一般の人が事前にリスクを想定して自ら準備しておくというのは、現実的ではありません…よね(?)
だから、それを伺ったときに私は、
「もっと前に、当社に相談してくれれば…」
という思いでした。
目次
親の家で起こる“突然の手遅れ”
相続で揉めるリスク
① 自分が引き継ぎたいと主張して揉めるケース
長男:「この家は俺が住む! 思い出もあるし、まだ資産価値だってある」
次男:「いや、俺も相続したい。リフォームして使うつもりだ」
三男:「そんな古い家いらないよ。売って現金で分けた方がいいだろ」
母(心の声):「みんなで仲良くしてほしいのに……どうして喧嘩になるの」
──欲しい人が複数いれば取り合いに、残したい人と売りたい人がいれば真っ二つに。兄弟の意見は衝突し、話し合いはこじれてしまいます。
② 誰も引き継ぎたくないから揉めるケース
兄:「解体費なんて出したくないよ」
妹:「固定資産税だって払えないし、庭の草刈りは誰がやるの?」
母(心の声):「せっかく建てた家なのに……誰も残してくれないの?」
母(さらに心の声):「子どもたちはもう自分の家を持っているから仕方ない…でも、せめて孫の誰かが住んでくれれば……
──けれど現実には、小中高校生の孫にとって祖父母の家は「遊びに行く場所」でしかありません。将来の住まいなんて想像もできないし、進学や就職で遠くに行くことだってあります。
親の「孫が使ってくれるはず」という期待は、多くの場合むなしく裏切られるのです。
判断できなくなるリスク
親が認知症や病気で意思表示できなくなると、遺産分割協議も売却契約も進められません。財産は凍結し、成年後見を通すしかなくなります。手続きは数か月単位、費用も数十万円単位でかかります。
その結果としての“空き家化”リスク
揉めて解決できない、判断できない──そうした停滞の末に行き着くのが“空き家化”です。
半年も放置すれば草木が生い茂り、1年もすればカビや雨漏りが始まる。近隣からの苦情でようやく気づく頃には、修繕や処分費が膨らんでしまいます。
自分の家も“未来の空き家予備軍”
ローンや維持費の重荷
定年後も住宅ローンが残る人は少なくありません。さらに、固定資産税や修繕費は年を追うごとに増加。暮らしを守るはずの家が、生活を圧迫する「負担」に変わっていきます。
子どもへの負担
親:「この家は大事な思い出の場所だから、将来も守ってほしい」
子(心の声):「築40年の家なんて負債にしか見えないよ……」
──親は“子のため”と思って残そうとする。けれど実際には、子ども自身が望んでいない。結果的に「誰も欲しくない家」になり、残された家族の悩みの種になってしまうのです。
売却のタイミングを逃すリスク
人口減少や空き家増加で、不動産の価値は全国的に下落傾向です。地方ではすでに「売りたくても買い手がつかない」状況が顕著になっています。

でも松戸や柏、流山といった首都圏なら大丈夫でしょ
と思う方もいます。
たしかに都心に近い分、下落スピードは緩やかに見えます。しかし決して安心とは言えません。
東京に直結しない沿線や、駅から遠い物件、立地条件が良くない住宅は、買い手から選ばれず市場に取り残されるリスクが高いのです。
“住める家”のつもりで残したものが、いつの間にか“負動産”と化す──それは親の家でも自分の家でも同じ現実として、すぐそこに迫っています。
健康と同じで、家も「予防」が大切
病気と同じく、家の整理も「まだ大丈夫」と思っているうちに、ある日突然“もう遅い”となります。
- まだ動けるうちに
- まだ話し合えるうちに
- まだ選択肢があるうちに
──手をつけておくことが、後悔をしないための唯一の方法です。
👉 次回は「どう整理をすれば揉めないか」を具体的にお話しします。