「実家を売るなんて、このひとでなし!」兄弟の反対で売却をためらった相続空き家

親が住んでいた家を売るなんて、このひとでなし!

ご相談者は、実家の売却について、兄弟から強い口調でそう言われたそうです。

ご相談者は60代。松戸市内にお住まいです。
相続した実家は地方都市にあり、ご相談者の単独名義で相続登記も済んでいました。

誰も住んでいない実家を、この先どうしたらよいのか。
迷われた末に、当社へご相談に来られました。

目次

売却できるのに、踏み切れない


実家はご相談者の単独名義です。
したがって、法律上はご相談者の判断で売却できます。

ところが、ご相談者には実家の近くに住む兄弟が2人いました。その兄弟が、実家の売却に強く反対していたのです。

親が暮らしていた家を残したい。
思い出のある家を、簡単に手放してほしくない。

そのお気持ちは、よく分かります。

しかし、お話を伺う限り、この先兄弟が実家へ戻って暮らすこともなく、子や孫が使う予定もありません。

誰も使う予定はない。
けれど、売却することには反対する。

その結果、ご相談者は、ご自身で売却を決められる立場にありながら、兄弟の気持ちを無視することができず、売却に踏み切れない状態になっていました。

3,000万円特別控除の期限が迫っていた

実家の状況を確認すると、「相続した空き家の3,000万円特別控除」を利用できる可能性がありました。

この特例は、一定の要件を満たす相続空き家を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。

ただし、いつ売却しても使えるわけではありません。
原則として、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。

ご相談者の場合、その期限が迫っていました。
仮に3,000万円の控除をすべて利用できれば、長期譲渡所得に対する税負担は最大で約600万円軽くなる可能性があります。

もちろん、建物の築年数や利用状況、売却方法などによって適用の可否は異なります。

それでも、期限を過ぎてから「やはり売却しよう」と決めても、失った特例を後から取り戻すことはできません。

思い出を残すにも、費用がかかる


実家を残すという選択が、間違っているわけではありません。
ただし、残すのであれば、そのための負担も引き受けなければなりません。

固定資産税、火災保険、草木の手入れ、建物の修繕。
遠方にあれば、現地を確認するための時間や交通費もかかります。
建物は、使わなくても傷んでいきます。
そして、ご相談者の代で結論を出さなければ、その実家は、いずれ子や孫へ引き継がれます。

「思い出があるから売らない」という選択と、「何も決めないまま先送りする」ことは、同じではありません。


私からは、ご兄弟に次のことを伝え、もう一度話し合ってみてはどうかとお話ししました。

・この先、実家を利用する予定はあるのか
・残す場合、今後の費用や管理を誰が負担するのか
・ご相談者の子や孫にまで引き継がせるのか
・特別控除を使える期限が迫っていることをどう考えるのか

売るか、残すか。
感情だけでも、損得だけでも決められない問題です。

だからこそ、誰が使い、誰が管理し、誰が費用を負担するのかまで具体的にしたうえで話し合う必要があります。

後日、ご相談者から連絡があり、ご兄弟も最終的には納得され、実家を売却して整理することになったそうです。

家族の「思い」と、先送りの現実

ご相談者は、単独名義の所有者であり、ご自身の判断で実家を売却できる立場にありました。
それでも、兄弟の気持ちを無視して、一方的に売却することはされませんでした。
とてもお優しい方なのだなと、私は感じました。

実際、同じように「自分の名義なのだから自由に決めればよい」とは割り切れず、ご家族の気持ちを尊重するあまり、身動きが取れなくなっている方は少なくありません。

ただ、何も決めないまま時間が過ぎれば、税制上の期限を迎えたり、建物の劣化が進んだりして、選べる道は少しずつ狭くなっていきます。

ご家族の気持ちを大切にすることと、現実から目をそらさないこと。
その両方を踏まえて、今後の方針を整理する必要があります。

※本記事は、実際のご相談をもとに、個人を特定できないよう地域や状況の一部を変更して構成しています。税制上の特例は、建物の築年数、利用状況、相続人の数、売却時期などによって適用要件が異なります。

相続した実家について、
「売りたいが、家族が反対している」
「誰も使わないが、手放す決心がつかない」
「いつまでに判断すればよいのか分からない」
という場合は、結論を急ぐ前に、まず現状と選択肢を整理するところからご相談ください。

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この記事を書いた人

株式会社まっとう代表。松戸市を拠点に、相続した実家や空き家、権利関係に課題のある不動産などの整理・売却を支援しています。単なる売買にとどまらず、金融実務経験を持つ1級FP技能士として、法務・税務上の論点も整理し、必要に応じて専門家と連携しながら解決を図ります。認定NPO法人で成年後見に関する相談業務にも携わっています。

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