実際に寄せられたご相談をもとに、不動産や相続をめぐる迷いと判断についてご紹介します。個人が特定されないよう、一部の事情を変更しています。

自分が生きているうちに、この不動産を整理しておきたいんです。
当社に相談に来られたのは、80代の女性でした。
その不動産は、亡くなったご主人から相続したもの。
もともとは、ご主人が親族の住まいとして購入した家でした。
現在は、ご主人のお姉様が一人で暮らしています。
相談者が義姉に家を貸しているカタチですが、賃貸借契約書はありません。
家賃も、周辺相場の3分の1ほど。
長年続いてきた親族間の貸し借りです。
しかし、相談者と義姉は関係が遠いうえ、折り合いもよくありませんでした。



この関係を、自分が生きているうちに終わらせたい
それが相談者の希望でした。
相談者には複数のお子さんと、お孫さんがいます。



自分が亡くなったあと、子どもや孫に面倒な問題を残したくない
その思いは、かなり強いものでした。
お子さんの多くは母親の気持ちを理解し、不動産の整理に賛成してくれました。
ところが、一人の息子さんが強硬に反対。
相談者は最終的に売却を決断し、
当社宛ての売渡承諾書にも署名しました。
それを受け、私は、NPO法人で成年後見の相談業務に携わってきた経験も踏まえ、事前に弁護士にも相談。
購入後、義姉の生活に配慮しながら、どのように解決を図っていくか準備を進めていました。
ところが、それを知った息子さんは、母親(相談者)に対して、



売却するなら、親子の縁を切る!!
と迫ったそう。
結局、相談者は売却を断念せざるをえませんでした。
もちろん、そこに住む義姉の生活を無視して、売却だけを進めるわけにはいきません。
当社が購入した後は、地域包括支援センターなどとも連携しながら、できる限り穏やかな形で解決を図る方針でした。
簡単な話ではありません。
それでも、相談者が元気で、自分の意思を明確に示せる今なら、時間をかけて調整することができます。
息子さんは、



その不動産は、将来自分が何とかする!
実の息子を信用できないのか!?
と話していたそうです。
ただ、その息子さんは遠方に住んでいます。
何かあったとき、すぐに駆けつけて対応できる距離でもありません。
他のお子さんたちも、実際に対応するのは難しい状況でした。
今は、義姉が一人で生活できています。
ただもし、近い将来、介護が必要になったらどうするのでしょうか。
認知症になったら。
家賃が支払われなくなったら。
建物の修繕が必要になったら。
相談者自身の判断能力が低下したら。
そのとき、遠方に住む息子さんが、本当にすべてを引き受けられるのでしょうか。
「将来、自分が何とかする」
そう言って売却を止めても、問題が解決したわけではありません。
何もしなくても、今日明日困る話ではありません。
しかし、時間がたてば、本人も入居者も年齢を重ねます。
関係者が亡くなれば、相続人が増える可能性もあります。
今なら使える方法が、数年後には使えなくなっているかもしれません。
つまり、先送りとは「何も決めなかったこと」ではありません。
問題がより難しくなってから、次の世代に引き継ぐという決定でもあります。
私は、この相談者が人生の最期に何を思うのだろう、と考えることがあります。
本当は、



自分でできることは、自分が元気なうちに終わらせた
そう思って、何も思い残すことなく旅立ちたかったのではないでしょうか。
家族が売却に反対すること自体が、悪いわけではありません。
ただし、「売るな」と言うのであれば、誰が、いつ、どのように問題を引き受けるのか。
そこまで具体的に決める必要があります。
「将来、何とかする」という言葉だけで時間が過ぎ、
その将来が現実にやってきたときは、もう何ともできなくなっていることがあるからです。
不動産の整理でお悩みの方へ
「不動産を今のうちに整理したい。でも、家族の意見がまとまらない」
そのような段階でもご相談いただけます。売却ありきではなく、現在の状況を整理したうえで、何から手をつけるべきか一緒に考えます。

